読売新聞
2023年6月4日朝刊掲載記事
(5月18日、米テキサス州ダラスで)
世界最大の学生科学コンテスト「国際学生科学技術フェア」(ISEF)が5月中旬、米テキサス州ダラスで開催され、昨年の日本学生科学賞(読売新聞社主催、旭化成協賛)で入賞した高校生ら3人が参加し、審査を受けた。3人は審査員や一般来場者に研究内容を工夫して伝え、世界を舞台に経験を積んだ。(米テキサス州ダラス 冨山優介、写真も)
3人は、▽今春に大阪教育大付属高天王寺校舎(大阪府)を卒業したブランデル葉奈(はな)さん(18)▽群馬県立高崎高3年の高田悠希(はるき)さん(17)▽長崎県立長崎北陽台高3年の大森春音さん(17)。それぞれ、日本学生科学賞では文部科学大臣賞、内閣総理大臣賞、環境大臣賞を受賞した。
ブランデルさんは、昆虫のアリが滑らかな壁を登る仕組みを解明し、ISEFで物理・天文学部門の2等と、特別賞の「科学による社会貢献賞」の2等を受賞した。
アリの足先には爪や毛、粘着物質、吸盤などがある。気圧を下げたり、足先に極小のビーズを付着させたりする実験を行い、アリは主に吸盤を用いながら、補助的に粘着物質も使って登るとの結論を出した。
アリのぬいぐるみを持参し、審査でも活用したブランデルさんは、「予想と違った実験結果が出て、面白いと思ったことを伝えた。審査員も興味を示してくれて、質疑を楽しめた」と振り返った。
高田さんは、視覚障害者の歩行を支援する人工知能(AI)搭載の白杖(はくじょう)を開発した。他の参加者や一般来場者からも質問を受け、「ロボットやAIの研究は米国で盛んだと実感した」と刺激を受けた様子だった。
大森さんは長崎の干潟での調査から、巻き貝の貝殻の大きさが異なる仕組みを突き止めた。「地元の自然を観察した成果で、世界の色々な人に関心を持ってもらえたのがうれしい」と手応えを語った。
ISEFは新型コロナの影響で2020~21年はオンライン、22年はオンラインと一部対面で実施され、今回、完全に対面で開催するのは4年ぶりとなった。60を超える国・地域から高校生ら約1600人が参加した。