読売新聞
2020年10月4日朝刊掲載記事
オンラインの研究発表会で、吉野彰さん(上段の中央)に挙手して質問する学生たち
◆サステナブルへ動く世界の第一線で活躍を ノーベル賞・吉野さんが激励
中学生と高校生の科学コンクール「日本学生科学賞」(読売新聞社主催、旭化成協賛)で成績が優秀だった学生らによる研究発表会が9月12日、オンラインで開催された。発表会には、リチウムイオン電池の開発者で昨年のノーベル化学賞を受賞した吉野彰・旭化成名誉フェロー(72)が特別参加し、熱のこもった発表をじっくり講評した。
学生らは、米国で5月に開催する科学コンテスト「国際学生科学技術フェア」(ISEF)に出場する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で中止になった。発表会は読売新聞が「日本学生科学賞ISEF2020オンライン発表会」と題して企画し、ISEFに出場予定だった8人のうち6人が参加した。
そのうち都立日比谷高を今春卒業した米ボストン大の塩野かなでさん(18)は、インターネット通販の購買データから客層の特徴を統計学的に解明した成果を発表した。「経済学とデータサイエンスが融合すれば消費者が求める情報を提供できる」と話す塩野さんに、吉野さんは「情報科学や社会学など複数の得意分野を持てば独創的な研究者になれる」とアドバイスした。
筑波大付属駒場高を今春卒業した行方光一さん(19)は、人工知能(AI)の学習機能を使った自動作画システムを発表。斬新な研究に興味津々の吉野さんは「サインもきれいに書ける?」「どうやってAIに学習させるの?」と、次々と質問をぶつけていた。
逆に「研究に行き詰まった時の対処法」を聞かれた吉野さんは「オンとオフの切り替えが大事」とし、「ぎりぎりまで自分を追い込み、もやもやしながらふとんに入ってスイッチを切ると、ぱっとひらめきが出る」と話した。
最後に吉野さんは「皆さんが大学を卒業する頃には、サステナブル(持続可能)社会に向けて世界が動き出す。変革の時に世界の第一線で活躍して」と激励した。
研究発表会の模様を収録した動画(ダイジェスト版)は後日、日本学生科学賞のホームページで公開される。
◎ISEF2020に出場予定だった8人(所属は出場決定当時)
飯田和生(安田学園高3年)、塩野かなで(都立日比谷高3年)、元位美夢(みむ)(埼玉県立浦和第一女子高2年)、新田悠貴(徳島県立城南高3年)、玉野弘人(同)、岩田晃陽(名古屋市立向陽高3年)、久保風仁(ふうと)(同)、行方光一(筑波大付属駒場高3年)