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第68回 日本学生科学賞 第68回 日本学生科学賞

中央最終審査・表彰式

後輩へのエール

喜びの声

第65回日本学生科学賞
中央最終審査・表彰式

記念シンポジウム
科学でつくる 未来の世界

 理系人材の育成を目指して1957年に創設された「日本学生科学賞」(主催・読売新聞社、協賛・旭化成)が65回目を迎え、先月、東京都江東区の日本科学未来館で記念シンポジウムが開かれた。テーマは「科学でつくる 未来の世界」。ノーベル化学賞受賞者の吉野彰・旭化成名誉フェローらが登壇し、科学の魅力や社会の課題解決のための研究について語り合った。

 シンポジウムには吉野さんのほか、中央最終審査会場となっている日本科学未来館の浅川智恵子館長、中央審査委員を務める高橋正征(まさゆき)・日本科学協会会長、東京芸大美術学部デザイン科准教授でアーティストのスプツニ子!さんが登壇した。同賞の最終審査に出場した中高生がオンラインで聴講した。

 吉野さんが開発したリチウムイオン電池は、軽くて繰り返し充電ができる。脱炭素社会の実現のカギを握る技術でもある。吉野さんは「科学の醍醐(だいご)味は社会を変えるということ。乗り越えなければいけない壁があっても、壁が来ればそれだけ早くゴールが近づいたんだとポジティブに捉えてほしい」と語った。

 大学で数学とコンピューターサイエンスを学び、科学とアートを結びつける活動を続けるスプツニ子!さんは「『女の子なのに数学が好きなの?』と言われたことがあった。思い込みや偏見に負けないでほしい。私はこの壁を壊したい」と力を込めた。

 高橋さんは60年以上前の高校時代、植物に関する研究で同賞に入賞した経験を持つ。最近の応募作品の傾向について審査委員の立場から「ユニークなテーマが増えている」と評価した。ただ「中高生だけでアプローチの仕方を考えるのは難しいので、アドバイスする存在が大切だ」と指摘した。

 浅川さんは「諦めないで道を開いていってください」と語りかけた。プールでの事故で14歳の時に失明、社会人になってからシステム開発の道を歩んだ。「私は目が見えないから選択肢がすごく少ない。進路で失敗したと思ったこともあったが、最後までやり抜くしかなかった」と振り返った。

2022年1月30日付 読売新聞朝刊掲載