第69回日本学生科学賞
「肉は『ジュー』と焼けるのか」
について研究する阿部さん
肉を焼くときに「ジュー」という擬音語を使うけど、本当に「ジュー」という音が出てる? そんな素朴な疑問をきっかけに、自宅のホットプレートで肉や野菜を焼いて録音し、自分の声と比較した。
料理をしたり、お菓子を作ったりすることもある阿部さん。夏休みに「寝転びながら料理漫画を読んでいて気になった」という。
材料には鶏ささみ、牛もも肉、豚バラ肉、ベーコン、トマトなどを用意した。ホットプレートを240度に熱し、それぞれ60秒間焼いて録音した。比較対象として、50音や濁音の「ジ」「ズ」など計106音を自分の声で収録した。
解析ソフトで周波数を分析すると、牛もも肉を焼いたときの音は「ジェ」、ベーコンは「ジュ」や「ジョ」と似ていることが分かった。脂の多い肉は焼くと脂が溶け出して、高い音が出ることも判明した。
さらに、焼き音を瞬時に文字変換するソフトを自らプログラミングした。〈1〉ホットプレートに置いた時の瞬間音〈2〉焼いている最中の継続音〈3〉焼きが進んだ後の余韻――の3要素に分け、それぞれの周波数から最も近い擬音語を自動的に当てはめる。例えば、ベーコンでは、〈1〉「ジョ」〈2〉「ヂ」〈3〉「ヴヴヴ」という具合だ。生成AI(人工知能)を使い、これらを結合した「ジョヂヴヴヴ」という擬音語が、肉や野菜のイラストとともに漫画のように表示する仕組みも組み込んだ。
阿部さんは「肉を焼く実験が研究テーマとして通用してうれしい。今後、動物の鳴き声など他の音にも応用し、翻訳ができるアプリを作りたい」と笑顔を見せた。
2026年1月20日付 読売新聞朝刊(全国版)
内閣総理大臣賞を受賞した
自然科学部クワガタ班
子どもたちの人気者クワガタムシ。幼虫のオスとメスを見分ける方法として知られるのが、おなかに一対ある丸い「メス斑」だ。卵巣のもとになる組織とされていたが、オスにもまれに持つ個体がおり、正体は不明だった。
クワガタ班の1、2年生3人は、木材を食べる幼虫が、消化を助ける酵母を体内に持っていることに注目。メス斑が、卵巣ではなく、酵母を子孫に受け渡すために重要な組織である可能性を観察で裏付けた。
コクワガタの幼虫100匹以上を飼育し、実験に用いた。メス斑を解剖すると、消化管にくっついた組織だと判明した。DNAなどを分析すると、木材の消化を助ける酵母が検出された。成虫のメスは酵母を保持する器官「菌嚢(きんのう)」を持っていることが知られている。菌嚢から子孫のメス斑に酵母が代々受け継がれている可能性があるという。
一方、幼虫がさなぎになるとき「蛹室(ようしつ)」という土の部屋を作る。これまで、壁に糞(ふん)を塗りつけ、成虫になると壁から酵母を回収するとの説があった。蛹室と、紙で作った部屋で育てた成虫を比較すると、確かに蛹室育ちの方が菌嚢の酵母が多く、酵母が伝播(でんぱ)する仕組みを説明できる結果だった。
これらの結果は、図鑑の記載を書き換える可能性もあるという。2年生の石橋桐磨(とうま)さん(17)は「研究に没頭した。結果が出るのか不安になったこともあったが、新たな成果が出てほっとしている」と喜んだ。今後は、酵母がなぜメス斑に集まるのかなどを詳しく分析していく計画だ。
2026年1月20日付 読売新聞朝刊(全国版)