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第67回 日本学生科学賞 第67回 日本学生科学賞

中央最終審査・表彰式

後輩へのエール

喜びの声

科学賞審査

第64回日本学生科学賞の中央最終審査会が2020年12月22日、23日に開かれ、24日には表彰式が行われた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、初のオンライン開催となった審査会、表彰式の様子をリポートする。

第64回日本学生科学賞
中央最終審査・表彰式

日本学生科学賞初のオンライン審査

最終審査

 今回の応募総数は全国で約3万2000点。コロナの影響で部活動や個人の研究活動が制限されたこともあり、応募数は例年の半分以下にとどまった。各県から選ばれた優秀作計約300点を集め、11月14、15日に読売新聞東京本社で中央予備審査を行い、中学、高校各20点が中央最終審査に進出した。

 例年、最終審査は日本科学未来館(東京都江東区)に中学、高校の進出校がそれぞれ発表用のブースを設け、審査委員が会場を回る形式で行ってきた。今年度は、会場に集まることによる感染リスクを避けるため、オンライン会議システム「Zoom」による審査とした。

 審査は22日に中学部門、23日に高校部門に分けて実施された。出場校の生徒たちは、中央審査委員の待つオンライン会議室に順番に入り、審査が進められた。

画面越しに審査委員からの質問やコメントを聞く生徒たち

 審査ではまず、研究を行った動機やねらい、実験方法、結論などをまとめた5分のプレゼンテーション動画を全員で視聴した後、審査員が順にマイクをオンにして発言し、画面越しの質疑応答が行われた。

 普段活動する教室からオンライン会議に参加する学校も多く、実際に実験で使った植物をカメラに写す生徒も。秋田県の中学校の審査では、生徒らの後ろに雪景色がのぞき、日本各地をつないで行う審査ならではの光景となった。

一部の審査員は日本未来科学館からオンラインで参加した。

 高校の部で内閣総理大臣賞を受賞した筑波大学付属駒場高校(東京)の豊島慶大さん(3年)の質疑では、研究作品の「点字を墨字に翻訳するアプリ」に取り組んだきっかけについて質問が出た。豊島さんが障害のある生徒との交流活動で、点字の翻訳に誤字が多いことに気づき、そうした体験を踏まえて研究を始めたと説明すると、審査の先生方からは「実体験から始まったすばらしい成果。これからもその発想を生かしてほしい」などの賞賛の声が上がった。

 豊島さんが「アンドロイド用のアプリはすでに実際に使われています」と説明すると、審査の先生方から「もう社会に貢献しているのですね」と嬉しそうな反応が返ってきた。

 文部科学大臣賞を受賞した土佐高校(高知)の高橋孝弥さん(2年)の研究「地震時の副次的災害に伴う被害を考慮した避難経路の考察」でも、審査の先生から「行政がまだ考えていない課題に取り組んだ着想がいい。ぜひ『高橋モデル』を作ってください」と励まされ、高橋さんは笑顔で「頑張ります」と答えて、和やかに質疑は進んだ。

 2日間行われた審査では、多くの審査員から「着眼点が面白い作品だなと思いました」「新しい発見があり関心を持って聞いていました」「データがしっかり取れていました」「非常に発展性があって面白い研究」などと研究を評価するコメントが相次いだ。

 一方、「オリジナリティの部分をもう少し詳しく教えてください」「新しい発見はどこの部分ですか」といった研究の独自性を確認する質問も。また、データの取り方や実験方法のディテールを問い、正しい手順を踏んで結論を導いているのかについて詳しく聞かれたり、理論と実際の数値が合致していない点を詰められたり、仮説に対する疑問を示されたりする場面もあった。

表彰式

 表彰式は12月24日午後、会場の日本科学未来館の未来館ホールと、最終審査に残った各学校をZoomで結んで開催された。式典は無観客で行われ、例年出席している秋篠宮さまもお住まいの宮邸でオンライン視聴された。

 主催者を代表して挨拶した老川祥一・読売新聞グループ本社代表取締役会長は「素晴らしい作品が受賞し、日ごろの努力が実を結びました。指導にあたった先生、ご家族にもお祝い申し上げます。コロナ禍という大変な逆境にもかかわらず、3万2000点もの応募があり、苦しい状況で英知を振り絞った作品が集まったのだと思います」と述べた。

 続いて各賞の発表があり、名前が呼ばれた各チームや生徒は、歓声やガッツポーズで感情を画面一杯に爆発させた。涙ぐむ人もたくさんいて、それぞれに「クリスマスプレゼント」の喜びをかみしめていた。

 中学の部では坂戸市立城山中(埼玉)の矢野祐奈さん(3年)が「シングルリード楽器における吹奏音の研究2」で内閣総理大臣賞を受賞。矢野さんは「素晴らしい賞をいただけてうれしい。これからも音楽も研究も頑張っていきたい」とスクリーン越しに笑顔を見せた。高校の部の内閣総理大臣賞を受賞した豊島さんは「(受賞は)思ってもみなかったのでうれしい。これを励みに大学でも研究していきたい」と声を弾ませていた。

(読売新聞東京本社事業局 岡部匡志 内田淑子)