第65回日本学生科学賞
オシロイバナの種の研究で
内閣総理大臣賞を受賞した赤羽真帆さん
オンラインを通して受賞が伝えられると、先生たちがすごい勢いで教室に集まってきた。「あの瞬間はうれしくて、寿命が縮んだようでした」と満面の笑みを浮かべた。
研究では、オシロイバナの種が乾燥を経ないと発芽しないことを明らかにした。
オシロイバナは、幼い頃から身近にあったかわいい花。自宅の花壇に咲くオシロイバナを眺めたり、種をつぶしたりして、友達と遊んでいた。
研究を始めたのは小学6年生の頃だ。ヨウ素液ででんぷん反応が分かると習い、うがい薬をオシロイバナの種にかけて反応を観察した。「遊び半分で始めたことに、どんどん疑問がわいてきた」
発芽に必要な条件を調べたいと思ったのは、収穫直後の種が発芽せず、冷蔵庫で保存した種が発芽したことがきっかけだった。2年目の研究では、発芽と低温に関係があると考えたが、予想とは異なる結果に。3年目の今回は乾燥に着目し、成功した。
指導した山中佑輔教諭(34)は「知りたい、解きたいという意欲が強い。調べるのに大事な力は学年で一番」と評価する。
研究では、種の成長を11段階に分類した自作の表を活用した。小学生の時に作ったもので、「青二才期」「ごまおにぎり期」など、それぞれの段階の外見の特徴を捉えたユニークな名前がつけられている。「今思えば変わった名前。でも、とても役立った」と語る。
植物が研究対象のため、種が取れる時期が限られ、「湿度や温度の管理が難しかった」と振り返る。論文にまとめるのも一苦労で、徹夜で泣きながら取り組む日もあった。乗り越えられたのは、理系の両親の熱心なサポートがあったから。母・久美さん(51)は「一緒に研究するのが楽しかった。(娘よりも)テンションがあがることがあった」と笑う。
将来は警察官か、科学にかかわる仕事がしたいという。
2022年1月21日付 読売新聞(千葉県版)
ハチの「トントン」解明で
内閣総理大臣賞を受賞した河原永昌さん
「名前が読み上げられた瞬間、うれしさがこみ上げた。指導や研究に協力していただいた先生方のおかげで、欲しかった賞を獲得できた」
固唾(かたず)をのんで見守ったオンラインでの受賞発表を振り返って表情を緩ませた。
中学3年の課外授業「三重ジュニアドクター育成塾」で、イネやトウモロコシの害虫となるガの一種「アワヨトウ」の天敵、寄生バチ「カリヤサムライコマユバチ」に興味を抱いた。
大量の寄生バチを放てば、多くのガの幼虫に寄生し、一挙に害虫を退治できるのではないか、と考え実験を繰り返した。ほとんどのガの幼虫は卵を産み付けられ命を落とすが、生き残る幼虫がいることが分かった。
幼虫に塗料を付けてスマートフォンで動画を撮影。生き残った幼虫を調べると、寄生バチが幼虫に「トントン」と産卵管を繰り返し刺していることに気づく。何らかの液を注入された幼虫は、他の寄生バチを寄せ付けず、生き残る。結果的に、寄生バチは寄主のガを絶やさないよう行動しているのでは――と結論づけた。
今回の成果を踏まえて、「農学や生物学の研究を続けていきたい」と意気込み、「『トントン』する行動が他のハチにもあるのかを調べたい。メカニズムが分かれば、『トントン』するハチをなくすことができ、害虫駆除にも役立つ」と語る。
指導にあたった藤原良幸教諭(47)は「一生懸命に努力する生徒。疑問を解明しようと頑張った。これからも若い発想をいかして研究してほしい」とたたえた。
2022年1月27日付 読売新聞(三重県版)