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2015/1月号 2014/1月号
子ほめ、牛ほめ、演者ほめ ~~よみらくご流・出演者紹介

桂吉坊を褒める

  • 2016/4/20

 うらやましい。吉坊のことを書こうとすると、この言葉しか浮かばない。

 師匠・桂吉朝に早くに死に別れた。芸人としては本当に不幸な"生い立ち"だ。それを差っ引いても、彼のやってきたこと、通ってきた道は「うらやましい」としかいいようがない。

 大師匠・桂米朝で過ごした修業時代が、見事に噺家としての血肉になっている。他の同門の若手中堅とくらべても、「米朝酵素」の吸収の度合いはかなり高い。米朝の藝のいいところを、レアネタなども含めてきっちり受け継いでいる。数ある米朝の逸話を、自らの体験、先輩たちからの伝聞も含め、きっちり聞いて栄養とし、噺のまくらとして、僕ら観客にお裾分けをしてくれる。もちろん、師匠吉朝の芸と逸話も同様である。

 

 そして、なぜか、芸能の先達たちにかわいがられている。

 吉坊が各界の重鎮にインタビューした「吉坊がきく藝」(ちくま文庫、朝日新聞出版)を読んで、心からうらやましく思った。

 まず、インタビューの相手がすごい。

小沢昭一(俳優)

茂山千作(狂言師)

市川團十郎(歌舞伎俳優)

竹本住大夫(文楽大夫)

立川談志(落語家)

喜味こいし(漫才師)

宝生閑(能楽師)

坂田藤十郎(歌舞伎俳優)

伊東四朗(喜劇役者)

桂米朝(落語家)

 これだけの大物と話が出来るだけでもすごいのに、中身がまた面白いのだ。なぜオモシロイのか。それは吉坊の質問に対して、聞かれる側の名人達人たちが、実に丁寧に答えているからだ。驚嘆すべき、吉坊は「大物転がし」ぶりなのである。

 各項には、吉坊とインタビュー相手のツーショットが掲載されている。吉坊が「超」の字がつく童顔であることもあって、誰がどう見ても「じいさんと孫」のほんわか写真なのである。ああ、吉坊は、あの人にも、この人にもかわいがられている。

 インタビューを生業の一つにしている僕にとって、「吉坊のきく藝」は「うらやまし本」の極みである。「長井がきく藝」では、悔しいが、こんなによい本にはならないだろう。

 

 最後にもうひとつ、吉坊のうらやましいところを記しておく。それはね、とってもとっても酒が強いことだ。試しにネットで「吉坊 酒豪」と検索すれば、出てくる出てくる。実際に吉坊の飲みっぷりを見ても、実にうまそうに、それでもだらしないところはまったくなく、しゅっと飲んでいる。

 ああいう酒飲みに、わたしはなりたい・・・。

 

 しつこいようだが、最後にもう一度、吉坊はうらやましく、ねたましく、でも、なかなかいいヤツなのである。