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2015/1月号 2014/1月号
子ほめ、牛ほめ、演者ほめ ~~よみらくご流・出演者紹介

立川生志を褒める

  • 2016/1/12

 立川生志の最大の魅力は、その顔と体型にある。イケメンだといっているわけではない。天地神明にかけて(?)そんな事実はないけれど、「ブー師匠」と呼ばれ愛される円満な顔と、あの緩やかなシルエットが、生志落語にどれだけ武器になっているのか、生志本人は知っているのだろうか。知っているよね。

 生志は生粋の立川談志一門だが、僕らが勝手に抱いている「立川流」のイメージとは、少し肌色が違い噺家である。つかず離れず、でもやっぱり違うのだ。

 立川流の落語家は辛口である。今は少ないが、かつては毒もまき散らす人もいた。生志ももちろん例外ではない。まくらで政治批判をし、オカシイと思う社会風潮や、礼を失した人物には容赦なくかみついていく。落語の本編に入っても辛口は変わらない。

 たとえば得意ネタの「お見立て」では、主人公の喜瀬川花魁が、馴染み客の田舎のお大尽を嫌いまくる。

 「初めてあったときから、あっ、この人嫌だと思っちゃった。初登場第1位ってやつ?」

 「あんな奴と一緒にいるなら、目張りした部屋で練炭と一緒にいたほうがまし」

 そんなに嫌わなくても良いだろう。ただ、言葉はキツイが、生の高座を見ていると、そんなに後味は悪くない。生志の演じる喜瀬川花魁が丸々と太って愛らしく、毒をばらまいていても年頃の女の子がすねているようにしか見えないのだ。

 立川流家元・談志の十八番「芝浜」は、ドラマチックなネタだった。酒浸りの亭主を見事に更生させるかみさんが、賢婦すぎて可憐すぎて、時にクサイと感じることもある。

 生志の「芝浜」も談志流を基本に前座の頃から演じているネタなので、師匠のにおいは消しようがない。呑兵衛亭主に耐えて従う女房、終始地味で控えめだが、最後の最後で泣く。この場面だけは談志風が薄まり、見事に生志流になっている。こっちも泣かずにいられない。

 そして、無類の豚肉好き。これだけは談志=立川流とは何の関係もない。受験のために上京し、新宿の「三金」でトンカツを食べて感動した。「福岡にはこんなに分厚いトンカツはない」。以来、生志はトンカツを食べ続けているのだ。

 そして生志はブタになった。もちろん、本人はまだ人間の姿をとどめているが、手ぬぐいの柄、扇子のイラスト、カップやプレートなどの生志グッズから独演会の名前まで全部、かわいいブタのデザインなのである。

 「若い頃、二日酔いの日の昼飯はカツカレーに決めていた。これが食べられなくなったら、俺は終わりだと思ってたんです」

 「ブタキャラで売り出したら、もう痩せられませんよ」

 談志流とトンカツを絶妙の比率で混ぜ合わた生志スタイル。芸も体型も年々大きくなっている。

立川生志師匠.jpg