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2015/1月号 2014/1月号
子ほめ、牛ほめ、演者ほめ ~~よみらくご流・出演者紹介

柳家小満んを褒める

  • 2016/1/11

 粋なたたずまい。俳句など、ひけらかさないがにじみ出る文学の素養。酒や食材やスイーツ(!)への並々ならぬこだわりと蘊蓄。古今東西あらゆる演目をサラリと演じ、ネタを注文されて断ることはない。小満んのいいところを並べ、気の利いたホメ言葉で締めようかと思ったが、相手は僕よりはるかに上等だった。元々少ない我がボキャブラリーをどうひっくり返しても、手あかの付いたホメ言葉一つしか、思いつかないのである。

 「とにかくカッコイイ」

 それが、僕の目に映る「柳家小満ん」という噺家なのである。どうも申し訳ない(ぺこり)。

 2015年の小満んとの日々を振り返ってみよう。

 2月に上野広小路の風月堂で「雁風呂」というネタの話を聞いた。「苦いのは苦手だから」と小満んはアメリカンを注文。朝からコーヒー飲みすぎの僕はココア。「ココアにはホットケーキだろう」「師匠、ホットケーキ食べますか?」「いや、ここのはダメなんだよ。パンダの焼き印が押してあるから」頼んだことがあるのね。

 3月の独演会で「偽御使僧」を演じた。芝居でおなじみ「河内山宗俊」の「松江候玄関先の場」である。帰りがけ「師匠は、悪人もいいですね」と声をかけたら「どこか腹にあるんだね」と粋な答えが返ってきた。

 4月の寄席で季節ネタ「長屋の花見」を聞いた。すぐ後の出番の柳家さん喬が舞台袖を見ながらつぶやく。

 「小満ん師匠、横に小さな湯飲みを置いて。(季節に合わせて)鶯の絵が描いてあるんですよ、キザですねー。夏には何の柄になるのでしょう」

 噺家の中にも小満んファンは多いのである。

 6月、池袋の東武百貨店で寿司をごちそうになった。

 「白身は何があるの?」「今日はカレイとカンパチと○○と」「それ全部頂戴。一巻ずつ、二人同じものを」「はい」「次は貝類だな」「ホッキがあります」「じゃホッキをあぶって」次は光物「アジが二種類、イワシもあります」「じゃそれも全部」「お次は」「中トロを握って、〆はデザートの穴子だ」

 小満んは食べるのが早い。寿司ができるとすぐにパクリ。

 「年取ると量を食べられなくなるんだ。早く食べた方がいっぱい食べられるんだよ。何で一巻ずつかって? いろんな種類が食べたいからね」

 滞留時間は一時間弱。こういう食べ方もあったのか。

 9月の独演会は、珍しいネタが並んだ。時間ギリギリに日本橋亭に駆け込むと、ギドの処に主役の小満んが立っている!

 「今日は講釈種ですね」「うん、(「那智の滝」と「男の花道」の)二つだよ。芝居の初日に行くと、役者が口パクパクしてるだろ。今日はそんな出来」「おやおや」

 どのエピソードも小満んだけが輝いていて、僕はそれを見て「はあ」と感心しているだけだ。

 とにかく、何をやってもカッコいいのである。

柳家小満ん.jpg