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宮殿とモスクの至宝 2005年10月1日〜12月4日 世田谷美術館
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展覧会説明



【I】礼拝の場のイスラム美術
宗教としてのイスラム
スルターン・カーイトバーイのミンバル(説教壇) 制作地:エジプトおそらくカイロ1468〜96年 高さ705cm
【スルターン・カーイトバーイのミンバル(説教壇) 】

制作地:エジプトおそらくカイロ
1468〜96年
高さ705cm

 西暦622 年、預言者ムハンマド(マホメット)と彼に従う者たちは、生まれ育ったアラビアのメッカ(マッカ)から、メディナ(マディーナ)へ移住し、ここに初のムスリム(信徒)の共同体を建設しました。このできごとが、イスラム時代の始まりとされています。ムハンマドが受けたアッラー(唯一の神)の啓示は、ムスリムの聖典コーラン(クルアーン) に記されています。これは、ムスリムがいかに人生を送るべきかを述べています。

高さ7m余の木製象嵌細工のミンバル(説教壇)

 この章では、主にこうしたムスリムの礼拝の場のために作られたイスラム美術の品々を紹介します。とりわけ15世紀の高さ7m余の木製象嵌細工のミンバル(説教壇)は目を惹く出品物です。この他、中東のキリスト教徒の礼拝の場のために作られた美術も紹介します。

 ムスリム(信徒)は、日に5 回、定刻にメッカ(マッカ)の方向に礼拝をします。この方向をキブラと呼びます。その為、どこにいても時刻とキブラがわかるように開発されたのが、アストロラーべ(天体観測儀)です。アストロラーべは、占星術などにも使われ、イスラムでは天文学や、数学などが非常に発達しました。


燭台 【燭 台 】
エジプト
13世紀末〜14世紀初期
真鍮、銀象嵌
エナメル金彩装飾ランプ 【エナメル金彩装飾ランプ 】
エジプトまたはシリア
1347〜61年
ガラス、エナメル彩・金彩


【II】聖なる言葉:文字の意匠
装飾意匠として発展するアラビア文字
コーラン写本からの二葉 11-12世紀 紙、インク・金・彩色
【コーラン写本からの二葉 】

11-12世紀 紙、インク・金・彩色

 コーランに記される言葉はムスリムにとって非常に重要で、彼らはそれらを神の言葉と信じています。そのため、アラビア文字で書かれた美しいコーランの写本は、19世紀末まで手書で制作されました。コーランからの引用文は、本展で取り扱っているいくつかの美術品にも記されています。偶像崇拝を否定するイスラムにおいて、宗教的な場における具象的図柄の装飾は皆無であり、従って、アラビア文字による装飾的な書が、宗教的空間や宗教的用途の器物を飾る重要な形体となりました。本展のこの部門では、アラビア文字がイスラム美術の装飾デザインとして、宗教的な場所とコーランの章句が用いられない世俗の建物の双方において、いかに重要な役割を果たしているかを辿ります。また、それと対比するものとして日常の場で使用された図像表現を用いた意匠も展示されます。


饗宴文金具付小箱 【饗宴文金具付小箱 】
スペイン(ウマイヤ朝)
1000年頃
象牙彫り


【III】宮廷の美術:美と権力
優雅で華麗な王朝美術
野宴図タイル・パネル 陶製(フリットウェア) エナメル彩色(クエルダ・セカ技法) 制作地:イラン エスファハーン17世紀
【白地多彩野宴図組タイル・パネル 】

陶製(フリットウェア)
エナメル彩色(クエルダ・セカ技法)
制作地:イラン エスファハーン17世紀

 ここでは一変して、華やかで優雅な王宮や貴族の住居のための非宗教的な美術をとりあげます。

 それぞれの王朝の君主たちは、自分たちの権力を誇示するために美術を利用し、独特のスタイルを作り上げました。同時代に別々の地方で栄えた王朝間では、ことさら意図的に異なった美術スタイルを対抗して育成した感もあります。

 本章ではそのような例として特に16世紀から17世紀に見られるサファヴィー朝とオスマン朝の美術を紹介いたします。5mを超えるチェルシー絨毯として知られる初期サファヴィー朝スタイルの絨毯や、同様の大きさのオスマン朝の絨毯が見所です。

詩歌とイスラム美術

 宮廷では、しばしば抒情詩の即興などが、噴水や各種の花々が咲き乱れる美しい庭園で催されました。宮廷の美術品にはこうした社交行事の様子を伝えるものや、そこで吟じられた詩などが記されたものもあります。

図像表現について

 イスラムの礼拝では、聖像や聖画を拝むことはありません。ムスリムが物の形を写す絵画・彫刻より文字デザインやアラベスク(幾何学文様や唐草模様)を好んだのは、宇宙万物を創造するのは神様だという信仰にこだわるためです。しかし、生活や歴史や物語を記録する美術品としては、人物・動物を細密に描いた図像も発達しました。


【IV】王朝による美術庇護:オスマン朝
トルコブルーが色鮮やかなイズニク・タイル
タイル貼暖炉 制作地:トルコ(オスマン朝) おそらくイスタンブル 1731年 陶製(フリットウェア) 釉下彩画 高さ365cm
【白地多彩宝珠文タイル貼暖炉 】

制作地:トルコ(オスマン朝)
おそらくイスタンブル
1731年
陶製(フリットウェア)
釉下彩画 高さ365cm

 イスラムの統治者の美術に対する影響力を考察します。

 オスマン朝のスルターン、メフメト2世の時代に、オスマン朝の陶器に劇的な変革がもたらされました。中国の磁器に対抗して、メフメト2世がオスマン朝の陶器生産地の中心であるイズニク窯に宮廷の資金を注ぎ込んで改良に当たらせた結果でした。磁器にほとんど遜色のない硬質陶器が焼かれ、色彩もその後次第に多彩となり、デザインもチューリップやカーネーションといった花模様が人気となりました。他にも結び目模様や渦巻き模様などにデザインの洗練が見られていきます。本章では、華麗なイズニク・タイルを中心にオスマン朝の特色を伝える美術工芸品の粋をご紹介します。特筆すべきものとしては、高さ350cmのタイル製の暖炉があります。


饗宴文金具付小箱 【白地多彩花文タイル製天板付卓 】
トルコ
1560年頃
木象嵌、螺鈿、陶器、釉下彩画


【V】イスラムと中国・ヨーロッパの美術交流
東西文化交流の要衝としてのイスラム
白地藍彩青花文壺 中国(元)14世紀 真鍮口緑はイラン(カージャール朝)19世紀 磁器 釉下彩画 真鍮製の口緑 高さ33.8cm
【白地藍彩青花文壺 】

中国(元)14世紀
真鍮口緑はイラン(カージャール朝)19世紀
磁器 釉下彩画 真鍮製の口緑
高さ33.8cm

 16世紀までに、中東は東西交通の要衝となっていました。中央アジアを横切るシルクロードは、イスラム世界と中国を結び、インド洋に面した港や、エジプトのスエズ、イラクのバスラのような地は、東アフリカ、インド、東および東南アジアとの貿易で繁栄を極めました。また、地中海はヨーロッパとイスラム世界を結ぶメイン・ルートでした。これらの貿易を初めとする交流を通じて、様々な職人たちの交流も行われました。それらは、ラスター彩陶器、染付け陶器、象嵌金工、絹ビロード、象牙細工、木工細工などに表われており、イスラム世界が東西交流において重要な役割を担ってきたことがよく示されています。

ヴェネツィア・ガラスとイスラムガラス

エナメル彩などで有名なヴェネツィア・ガラスの技法の起源は、実はイスラム・ガラスです。13世紀〜14世紀、イスラム圏との交易によって、ヴェネツィアは、世界に誇るガラス産業を発展させたのです。


ラスター彩青釉帆船文大鉢 【ラスター彩青釉帆船文大鉢 】
スペイン
15世紀第2四半世紀
陶器、錫釉・ラスター彩
白釉青彩赤ラスター彩蓋付壷 【白釉青彩赤ラスター彩蓋付壷 】
ジョルジョ・ディ・グッピオ(イタリア)作
1510年頃
陶器、不透明白釉・ラスター彩


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