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作品集

第51回受賞作品の一部紹介

※生徒の学校・学年は入賞時のものです

内閣総理大臣賞(高校の部 生物)

「ショウジョウバエの幼虫は餌によって唾液分泌量を調節する」
埼玉県立浦和第一女子高等学校 SSH 2年 坂口 穂菜美

ショウジョウバエの交配実験を行った際、幼虫のいる瓶の餌は湿って粥状になっているのに対し、成虫だけの瓶では餌が固いままであることに気づいた。これは、幼虫が唾液を体外に分泌しているためと予想し、これを検証することにした。

幼虫の唾液はアミラーゼを含むため、ヨウ素デンプン反応を用いて唾液を検出する。デンプンを入れた寒天培地に、予めヨウ素液を滴下し青紫色に呈色させておく。これを切り出し、シャーレ内に置き、その上に一定数の幼虫を放す。幼虫が唾液を体外に分泌しているならば、寒天の青紫色は次第に失われ、さらに、色の変化の程度によって、唾液分泌量の相対値も知ることができるはずである。実験の結果、寒天の青紫色は薄くなり、幼虫が体外に唾液を分泌していることがわかった。
次に、寒天の固さを変え、その上に幼虫を放した。その結果、寒天が固いほど短い反応時間で青紫色が薄くなり、幼虫は餌が固いほど唾液を多く分泌することがわかった。
さらに、唾液はタンパク質分解酵素を含んでいるかを調べるため、固めたゼラチン片に幼虫を放して変化を見た。その結果、ゼラチン片の形が崩れ、ゼラチンの溶解した溶液をTLCで分離したところアミノ酸が検出された。よって、幼虫の唾液にはタンパク質分解酵素が含まれていると考えられる。

以上のことから、幼虫は摂食時、唾液を体外にも分泌し、固い餌ほど唾液分泌量を増加させ、分泌量を調節している。さらに、体外消化の対象は複数の物質に及ぶ可能性がある。

幼虫を放した寒天の色の変化
幼虫を放した寒天の色の変化

餌の固さによる寒天の色の変化の違い
餌の固さによる寒天の色の変化の違い

<講評>
ショウジョウバエ幼虫の摂食生態の中でも、餌の状態によって唾液分泌量を変えることを解明した貴重な研究である。餌の固さや成分によって分泌量を調節させることが実証されたことは、野外における生態を理解する上でも大きな示唆を与えることになる。今後の大いなる発展が期待される。

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内閣総理大臣賞(中学の部 広領域)

「地震によって起こる建物のゆれを減らす方法PartV」
福井県福井市立社中学校 3年 仲地 唯佳

日本は地震国であり、地震により多くの建物が被害を受け、それによって多数の死傷者が出ている。これらの被害を減らすには、大きな地震にも動じない、地震の力を吸収してしまう建物をつくればよいと考えた。

研究では次のことを目的とした。(1)建物の重量を支えなくてもよいゆれを減らす装置を作る。(2)建物の条件(高さ、重さ等)に関わらず、ゆれを減らす装置を作る。(3)建物の条件とゆれを減らす装置の性質との関係を明らかにする。(4)ゆれを減らす装置がゆれを減らすしくみを明らかにする。
まず、建物模型を作製し、建物の高さ・柱の太さ・重さをそれぞれ変化させ、振動台実験を行い建物模型の揺れ方を詳しく調べる。次に、ゆれを減らす装置として、振り子・鉄球・電車振り子・ばね・水槽の5種類を考え、これらの装置の振動の仕方について基本的性質を詳しく調べる。最後に、ゆれを減らす5種類の装置を7種類の建物模型にそれぞれ取り付けた時の効果を振動台実験で確かめる。

実験では、いずれの装置も、建物模型の条件に関わらずゆれを減らす効果が認められた。ゆれを減らす効果は、建物と装置が逆の動きをすることによって生じたと考えられる。
条件が異なる建物模型は、それぞれ固有のある決まった周期で揺れる。そして、この固有周期とゆれを減らす装置の固有周期が近い時、ゆれを減らす効果が現れる。今回用いたゆれを減らす装置を実際の建物に取り付ければ、地震時の建物のゆれを減らすことができ、建物被害を減らし、人命が助かると思われる。

実験に使用したゆれを減らす装置
実験に使用したゆれを減らす装置

建物模型ごとの各装置の振れ幅比率
建物模型ごとの各装置の振れ幅比率

<講評>
建物の条件に関わらずゆれを減らす装置を作るという目標を立て、ステップを踏んで、精力的に研究を積み重ねた点が高く評価できます。およそ考えられる視点では確実に調べているだけでなく、ユニークな視点での追究もあり、研究の深まりがあります。

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文部科学大臣賞(高校の部 物理)

「アスピレーターによる簡易放電管の製作」
千葉県・渋谷教育学園幕張高等学校 化学部 3年 牧野 美咲

放電現象を観察する為には、市販の放電管を使うか、真空ポンプで放電管内を真空にする必要がある。本研究では、減圧に身近なアスピレーターを用い、安価で汎用性の高い簡易放電管の製作を試みた。また、分光器を自作し、分子スペクトルの撮影、解析を試みた。

放電管内の真空度を高めるため、放電による劣化の少ないシリコン栓を用いた。気体の封入時には、三方コックを用いて空気が入らないようにした。
T字管を放電管に用いたところ、十分な光量を得られなかったので、放電光を集束させるために、融点が高く金属イオンの影響を受けない石英ガラスのキャピラリーを用いた。
回折格子には分解能が優れているDVDを用いて、分光器を自作した。気体の種類を変えて分子スペクトルをデジタルカメラで撮影し、写真の輝度を画像解析ソフト「マカリ」で解析した。

アスピレーターによる減圧でも、再現性よく十分な明るさの放電現象を観察できた。また、気体による色の違いも肉眼で確認できた。
アスピレーターが水流を利用していることから、水蒸気の影響があると考え、それを考慮に入れた結果、水素、二酸化炭素、メタノール、アンモニアなどの分子スペクトルをデジタルカメラで撮影し、マカリによりピークを同定することができた。

アスピレーター法による放電装置
アスピレーター法による放電装置

自作した分光器と撮影法
自作した分光器と撮影法

<講評>
アスピレーターでの減圧には限界があるにもかかわらず、陽光柱の帯状放電を得るにいたった工夫は、根気強く研究を進めた成果と思います。分光器の開発も、市販のものでなく高校生の手作り実験器具として定番のものであり親しみが湧きます。これを用いて放電光のスペクトルを観察したことも意義のあることです。

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文部科学大臣賞(高校の部 化学)

「有機化合物水溶液を燃料とする燃料電池の研究」
千葉県立安房高等学校 化学部 2年 日高 翔伍・池田 浩一

エネルギーと環境問題を解決し得る科学技術の一つとして燃料電池が注目されている。中でもダイレクトメタノール電池が実用化に最も近く、非常にエキサイティングな研究分野である。
パラジウムメッキしたステンレス金網、セロハン膜、クッキングペーパーを交互に重ねることにより、低コスト・簡単・高性能のメタノール電池を作ることができた。この電池の反応の仕組み、濃度と性能との関係等を考察した。さらにほとんどの水溶性有機化合物について、燃料の適不適を調べ、その原因を追究した。

メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸、グルコース、ビタミンCを燃料とする燃料電池が作れた。意外にも、メタノールよりエタノール電池のほうが性能が良い。その要因として、エタノールは燃料のクロスオーバーおよび触媒の一酸化炭素被毒が少ないためであることをフェーリング反応等で確認した。
6種の中ではホルムアルデヒドが抜群の性能を示す。次いでギ酸、エタノール、メタノール、グルコース、ビタミンCの順となった。

メタノールより安全なエタノール電池の実用化を確信する。ホルムアルデヒド電池は危険性を配慮すれば特定の用途で優れた働きをするだろう。グルコース・ビタミンC電池は安全性を最優先した医療用などに期待が持てる。

燃料電池の模式図
燃料電池の模式図

完成した燃料電池
完成した燃料電池

<講評>
水溶性有機化合物の水溶液のうちで、より性能の高い条件を検討し、実験結果から効果の原因を考察しています。実験結果からメタノールとエタノールとでは、エタノールの方が高い性能を示すことを見出しました。

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文部科学大臣賞(中学の部 ICT)

「イラストロジックを速く、簡単に解く:Illacike」
東京都・筑波大学附属駒場中学校 中高パーソナルコンピューター研究部 2年 原 将己

パズルブームの中で、完成後の盤面が絵になるという特徴から、イラストロジックの人気が高い。しかし、盤面が大きくなるほど極端に難しくなる。そこで、イラストロジックをコンピューターに解かせてみようと考えた。

まず、各列に対して全探索を実行させ、全ての有効な可能性に共通しているマスを新たに決定した。簡単な問題はこの方法で解けるが、盤面が大きくなると途端に処理数が大きくなり解けなくなってしまう。そこでさまざまな高速化を試みた。
・探索の途中で矛盾が見つかったら、その探索を中止し、次の可能性に移る。
・両端から連続して決定しているマスがあれば、その部分の探索を省略する。
・左端に詰めた場合と、右端に詰めた場合を比較して決定する。
・部分的に一致する探索は、一致する部分の探索が不要なのでそこで停止する。
これらの方法により、最終的に相当な高速化に成功した。また、解くこと以上に問題の入力に時間がかかると思い、OCRの制作も試みた。

OCRは完全にはできなかったものの、半分以上の数字を正しく読み込めるようになった。今後、OCRの改良や問題作成機能の制作など、研究の余地がありそうだ。

イラストロジックの例(解く前)
イラストロジックの例(解く前)

イラストロジックの例(解いた後)
イラストロジックの例(解いた後)

<講評>
数字データを論理的に解決するという、コンピュータの得意な作業を利用しており、よい発想だと思います。特に解決部分のプログラムを開発した点は高く評価します。また、既存の問題の入力にOCR機能によって上手に読み込めるように工夫した点も評価します。

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環境大臣賞(中学の部 地学)

「有孔虫化石の研究 −上総層群の地層と堆積環境−」
千葉県茂原市立西陵中学校 1年 田中 里桜

有孔虫化石で地層の堆積した年代や古環境が分かると知り、これを使って茂原地域の地層の成り立ちを調べてみようと思った。上総層群7つの地層を網羅する17か所の露頭を探して、地層の重なりや岩石の様子を調べた。また泥岩を試料処理して有孔虫化石を検出し、環境を示す種の分析をもとに、上総層群が堆積した古環境について考察した。

岩相は下位から上位に向かって粗粒化し、堆積した海が浅海化していったことを示す。浮遊性有孔虫は暖流系の種が多い。長南層より上位にはやや低温を示す種が多いことから、暖流の影響下で堆積し、次第に寒流の影響を受けたと思われる。
一方、底生有孔虫は4、500mより深い水深を示す種が多く、大陸棚斜面の漸深海のような環境が考えられる。長南層より上位に150mより浅い環境を示す種が産出したことから、下位から上位に向かって浅海化した傾向がうかがえ、岩相の変化とも一致する。

地域に分布する上総層群について主に有孔虫化石による古環境解析を行い、水温や水深に関するいくつかの新知見を得た。房総半島中・西部のデータと合わせることにより、上総層群の堆積した環境を空間的に復元することが可能となる貴重なデータである。

産出した主な古環境示標種
産出した主な古環境示標種

上総層群の蓄積環境の変化まとめ図
上総層群の蓄積環境の変化まとめ図

<講評>
膨大な量の有孔虫化石の取り出しや同定、化石の分類・整理には相当な時間がかかっていることがうかがえます。この研究に取り組もうとする研究者自身の探求の意欲や忍耐強い態度がまずもって高く評価されました。

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