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受賞者インタビュー

学生科学賞から道開く

過去の日本学生科学賞の受賞者たちは、受賞を一つの糧として、現在も研究を行い、活躍している。
自分の体験を通して感じたこと、研究のヒントなどを語ってくれた。
※本文中の年齢などは、掲載当時のものになります。

プラナリア愛で研究

下山 せいら さん 東北大特任助教(27)

高校時代に作ったプラナリアのぬいぐるみを手に、当時の研究の動機を語る下山せいらさん(8月26日、仙台市で)=冨田大介撮影

 「多くの優れた研究の中から選ばれ、大きな自信がついた」。埼玉県立浦和第一女子高2年だった2005年、水生生物プラナリアの研究で、第49回日本学生科学賞の文部科学大臣賞を受賞した。これで翌年に米国で開かれた世界最大の科学コンテスト「国際学生科学技術フェア」(ISEF)にも出場し、動物学部門の1等になった。
 どんなに体を切られても再生するプラナリアとの出会いは中学2年。テレビ番組で見た姿に「つぶらな瞳がかわいい」と一目惚(ぼ)れし、自宅で飼い始めた。
 そのうち、ニョキニョキと咽頭を伸ばし、エサの鶏レバーを食べる姿に首をかしげた。「ほとんど目が見えないのに、どうやってエサに気付くのだろう」。この疑問を解くため、高校の生物部で研究を始めた。
 エサに含まれる何らかの物質に反応しているのではないかと、仮説を立てては様々な物質を試してみたが、思うような成果に結びつかず、1年が過ぎた。「今年で最後」と決めた2年生の秋、グリコーゲンの存在に気づいた。「この物質に反応するのでは」。ひらめきに近い仮説を10匹以上で試し、立証した。
 当時、プラナリアは再生に関する研究が多く、捕食の研究は例がなかった。その独自性が評価された形で、「好きなことをとことん突き詰めれば、世界で一番になれる」と実感した。
 進学先の筑波大、京都大大学院でもプラナリア研究を続け、今年4月から東北大の特任助教に就いた。新天地では高校1、2年生を指導、未来の科学者を育てる「飛翔型『科学者の卵養成講座』」を担う。
 高校時代、交流があった大学院生たちと接し、ひたむきな態度に感銘を受けた。「研究に取り組む姿勢を教えてもらった。今度は私が教える番」。高校生のやる気を引き出す企画を立てたり、研究の進め方を助言したりしている。

失敗しても逆転できる

藤沢 雄太 さん 東京大学理科一類(20)

「失敗は挽回できる」と語る藤沢雄太さん(大分市内で)

 「目論見(もくろみ)が外れたからこそ生まれた成果。失敗は逆転できる」。2013年、大分県立大分上野丘高2年の時、仲間と第57回日本学生科学賞の最高賞、内閣総理大臣賞を射止めた。
 電気を帯びてイオンの状態になった銅や銀などの金属を分離する方法や検出法を細かく追究した。当初狙った研究がうまく行かない中、試行錯誤の末にたどり着いた偶然の産物だったという。イオンの新たな挙動に興奮し、昼夜を忘れて実験を繰り返した。
 審査では、成果を分かりやすく説明する能力も評価される。150を超える想定問答をつくり、あらゆる質問に答えられる準備をした。
 1浪の末、今春に東京大が初導入した推薦入試を受け、高校時代の受賞を評価されて合格した。将来の夢は研究者。高校で気づいた実験の楽しさを一生味わいたいからだという。

〜2016年9月17日付 読売新聞(全国版)