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台湾の女性日本画家 生誕100年記念 陳進展
海外研修で得た知己の縁 画家の令息と会食、一気に「開催」へ
味岡義人 渋谷区立松濤美術館学芸係長
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「台湾の女性日本画家 陳進展」の会場風景

 2003年、台北へ行った折に、鴻禧美術館の廖桂英副館長を訪ねた。廖さんとの最初の付き合いは、1999年に美連協の海外研修として大陸・香港を経て最終調査地台北を訪れた時にさかのぼる。傅抱石関係の文献資料を求めて鴻禧美術館の図書室の蔵書を閲覧していた時に声をかけられたのが初めての出会いであった。そこで、鴻禧美術館所蔵の傅抱石作品の借用についてきいたところ、快諾していただき、おまけに、台湾有数のコレクターである蔡一鳴氏にも連絡をとっていただき、同氏の所蔵品も拝借が可能となった。しかも、無償での貸与ということであった。1ケ月前に南京博物院に依頼したところが高額の借用料を求められて困惑していた時であり、望外の喜びであった。その後、傅抱石作品返却の折に、鴻禧美術館所蔵品展を打診したところ、これもまた快諾していただいた。以後、私の妻が台湾出身のこともあって、家族ぐるみのお付き合いをしていただくことになった。

 この時に、廖さんに、今後の企画について何を考えているかと尋ねられたので、深くも考えもせず、「台湾美術もいいですね」などと、その朝に見た台北市立美術館常設展の陳進「悠聞」について、画風など日本にも受け入れられ易いであろうと語ったところ、廖さんが、「聞いてみようか」ということで、即座に台北市立美術館の黄才郎館長(当時)と陳進さんの令息蕭成家氏に電話をかけて、翌日の夜の約束をとりつけてしまわれたのである。

 次の日、廖さんの招待で会食、一気に話が進み、間もなく生誕100年であること、台北市美が全面的に協力してくれるということで、こちらとしても帰国したら、美連協に相談してみるということになってしまった。正直なところ、台湾美術に就いての知識は皆無に等しかったので、帰国直前にあわてて画集など買い求めた次第である。  帰国してから美連協に話をして、兵庫、福岡の両美術館が共催してくださることになったのであるが、それからが大変であった。

 蕭氏が会場を見るために来日され、その時に妻に通訳になってもらった。蕭氏は米国で医学を修め、麻酔医として米国で勤められたので、英語は達者であるが日本語はだめ、その中国語は些か台湾なまりが強く、話が進んでいくといつのまにか台湾語になってしまうからである。以後の連絡も何かあったら自宅へとお願いしたのであるが、それからは毎週のように自宅に国際電話がかかってくる。ついには、仕事に関係ない話が電話の大部分を占め、l時間も話をする。普段から会話の無い夫婦生活をしているために、妻からは「蕭さんと話をする時間のほうが貴方と話をする時間より多い」と言われるに至った(今も月に2回はかかってくる)。

 東京では、渋谷在住の方のご母堂が戦前に陳進と交流があったとのことで菊の花を描いた屏風が残されており、それが蕭氏に贈られることになるなどの出来事があったのであるが、何よりも思い出されるのは陳進の多くの作品のモデルになっている蕭氏のご令室の美しさであった。今も、台北を訪れる時には蕭氏に会うのであるが、その時にはお互いに相手の妻のことをほめたたえるのが常となっている。

※会期:2006年4月5日〜5月14日

美連協ニュース98号(2008年5月)より転載(※役職は掲載時)



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