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ドーミエ展−現代の諷刺詩−
藤巻和恵 伊丹市立美術館
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会場風景

 勤めはじめて早々、翌年秋に開催予定のドーミエ展を任せるとの指示がくだった。オノレ・ドーミエといえば当館のメイン・コレクションであり、しかも開館10周年を記念した国内外からの借用作品も含めた全国巡回展である。右も左も分からない新人によくもまぁ任せたと思うが(任命されたのは、多少フランス語が分かるからという単純な理由です)、館長の指導の下、まずは所蔵品を把握することから着手したのだが、所蔵品目録もなければ、基礎データを記した台帳もない。あるのは版画に記されたフランス語のレジャンド(詞書)を邦訳した未完成の手書き資料とマイクロフィルムのみ。同規模館の半数に満たない人員体制のなか、諸先輩方は学芸と庶務の両方をこなさねばならず、そのしわ寄せが収蔵品整理に及んでいたのだった。

 総数2000点余りと聞きぼう然となったが、足踏みしている時間はない。日々収蔵庫に篭り、作品の照合と採寸作業がはじまった。幸いにもカタログ・レゾネが完備されており、版画、絵画、彫刻の全てのジャンルにおいて基軸となる資料がそろっていた。レゾネとにらめっこしつつ、サイズ、ステート、レジャンドのチェック作業を行い、作品のイメージを頭にたたきこんでいった。

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美術館での通関作業、当時の大河内菊雄館長も見守る(中央)

  大変ではあったが、1年余りの間ひたすら作品と向き合えたのは、贅沢な時間であったと思う。新人の私を見かねて、先輩方も影ながら補佐してくださった。おかげで「実作にあたる」基本姿勢を学ぶことができたと感謝している。

 瞬く間に時は過ぎ、借用依頼(某美術館からは断られ)、ファシリティーズ・リポートにローン・フォーム(何それ?)、開催館会議(業務分担できることすら露知らず)、写真撮影(当時は職員自らポジで撮影することもままあり)、カタログの準備(出品目録を入れ忘れるという致命的なミス)、記者発表、作品集荷・通関業務、クーリエとの展示作業、取材対応等々、次から次へと舞い降りる仕事を一つひとつこなしていくのに精一杯の日々だった。

 至らぬ点も多々あった反省の多い展覧会だったが、なんとか無事に終了できたのもサポートしてくださった美連協はじめ、ご尽力、ご協力いただいた皆さまのおかげで、ただただ感謝するばかりです。

 最後に告解をひとつ。カタログの校正が間に合わず、無断で一人徹夜することに。当時の上司の皆さま、記してお詫びし申し上げます。

会期:1997年10月10日(金・祝)〜11月30日(日) 伊丹市立美術館
本展は、河口湖美術館、愛媛県立美術館(現・愛媛県美術館)を巡回

美連協ニュース132号(2016年11月号)から転載(※役職は掲載時)



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