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村山華岳・水越松南生誕120年記念
南画って何だ?! 近代の南画−日本のこころと美 展
飯尾由貴子 兵庫県立美術館 企画・学芸部マネージャー
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会場風景 村上華岳と水越松南の展示コーナー(上)
会場風景 洋画の展示コーナー(中)
出品作品の大半が軸、屏風であったため、大規模に展示ケースを造作。(下)

 本展のきっかけは水越松南(1888-1985)という画家である。異色の南画家ともよばれ、動植物や人物、周囲の風景を非常に独創的な視点と奔放な筆致でとらえ、独自の画境を拓いた。神戸生まれのこの画家の作品を当館は数点所蔵しており、時折常設展で展示されるのを横目で見ながらやりすごしていたが、ある時来館者向けにこの画家について話をすることになり、ついにこの不思議な画家について調べることになった。上手いのか下手なのか、つかみどころのない画風は一体どこからくるのか、見れば見るほど疑問は募るばかりである。松南の絵を理解するためには南画という、それまで私が敬遠していた領域からのアプローチが必須であろうことに気づき、このことが南画に注目する端緒となった。

 奇しくも松南は兵庫県ゆかりの画家村上華岳(1888-1939)と同年の生まれであった。華岳は南画家とは言われないものの、晩年の墨線を主調とした幽玄、枯淡の境地は南画的な情趣に通じるところがある。松南と華岳、この二人の兵庫ゆかりの画家を南画という共通項でくくり、南画・文人画に通底する美感や表現の特徴を探ることにより二人の芸術に迫ってみようと考えた。さらに2008年は両者の生誕120年にもあたることから、この機会に彼らの画業回顧とともに、近世から近代にかけての南画のあゆみを辿ってみたいという思いが実現したのが本展覧会である。

 南画のあゆみなどと大風呂敷を広げてはみたものの(今から考えるとなんと大それたことを!と冷や汗が出る)、当然ながら時代により地域により、南画の世界は広大深遠である。今回は近世の作品も欲張って手を伸ばしてしまったがために、リスト作成から交渉まで、普段おつきあいのない美術館、博物館、所蔵家の方々と相対することとなり、緊張の連続、出品の諾否に一喜一憂した日々のことを思い出す。展覧会には約70作家、190点の作品が並んだが、これほど多くの交渉を行い、多くの方々のご協力とご厚意を受けたのは最初で最後ではないだろうかと思う。学芸員としてそれなりの年月を過ごしてきたがこのような規模の企画を手掛けるのは初めてでもあり、全般にわたりご指導いただいた木村重圭先生や当時の上司、先輩の学芸員、同僚には感謝の言葉しかない。

 本展で何より収穫だったのは、南画的表現という観点から、日本画と洋画を並べることができたことである。萬鉄五郎や片多徳郎、牧野虎雄、梅原龍三郎、児島善三郎、須田国太郎に至るまで、日本的洋画を追求するなかで南画の表現に着目したとされる作家たちの作品を実際に展示することにより、確かに日本画洋画の区別を超えて南画的美意識を共有していた時期(作家)があったことを目の当たりにできた。本展を通じての反省点は限りないが他方それが私の現在の糧となり、仕事にひとつの方向性を与えてくれたと思っている。その年の美連協の優秀論文賞をいただいたことも大きな励みとなった。

 本展は自主企画展で単館の開催であったので、交渉その他は孤独な作業だった。もし第2弾をするならば、関心を同じくする他館の学芸員と研究会を組んでご一緒に・・・などという思いが頭をかすめている。

会期:2008年4月22日(火)〜6月8日(日)  兵庫県立美術館

美連協ニュース129号(2016年2月号)から転載(※役職は掲載時)



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