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思い出の展覧会
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シュルレアリスム展
謎をめぐる不思議な旅
園田博一 宮崎県立美術館 前学芸課長
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シュルレアリスム展のポスター、チラシ、フェイクファー加工がされた限定の図録など

 2004年7月、茨城県の花王霞ヶ浦研修所での美連協学芸企画会議で提案し、開催することができた「シュルレアリスム展」を思い出の展覧会として取り上げる。提案から3年後の2007年2月から10月までの8か月間で埼玉県立近代美術館、岡崎市美術博物館、山梨県立美術館、宮崎県立美術館、姫路市立美術館の5館を巡回することができた。開催までの2年半の間で10回近くの会議を、美連協事務局や開催館に於いて繰り返し実施した。全体構想から章立て、借用手続き、図録会議と5館の担当学芸が知恵を絞っての取り組みとなった。私にとって他館との連携と共同企画は初めての経験であり、とても意義あるもので、その後の学芸員としての仕事に自信を持てる機会となった。

 企画案の始まりは、本館所蔵のシュルレアリスムの作品で全国的な展覧会はできないのかという私自身の素朴な発想が事の発端である。シュルレアリスムの作品群は本館の収集の核である、「瑛九の創作の源泉を辿る」というコンセプトから生まれている。瑛九の画業を辿ると、ナビ派、キュビスム、シュルレアリスム、抽象画と幅広いものが見えてくる。

 県立美術館に赴任したとき収蔵庫でマグリットの《現実の感覚》を初めて見た時の震えるような感動を忘れることができない。その後の10年間でキリコ、ピカビア、エルンスト、マッタ、マン・レイ、セリグマン、ドミンゲス、ラム、マッソン、キャリントン、フィニー、タニング、ケイ・セイジ等の作家作品を収集する業務に就くことができた。この期間の出来事はまさに「痙攣的」なものであった。(さもなければ存在しなかったであろう。)ダリ、エルンスト、デルボーの油彩作品は収集できないまま、収集基金は凍結のままとなっている現在である。

 さて、シュルレアリスム展にもどると、全体構想で、展覧会を「旅」に見立て、「謎をめぐる不思議な旅」というサブタイトルを付ける事になった。序章、夜明け。第1章、意識を超えて。第2章、心の闇。第3章、夢の遠近法。第4章、無垢なるイメージを求めて。という風にシュルレアリスムの入門編的な展示内容を目指した。

 2007年は宇都宮美術館などでも同内容の展示が行われ、シュルレアリスムの盛り上がる年となった。

 また、この展覧会の思い出の一つに図録がある。通常版はエルンストの《博物誌》をモチーフにフロッキー加工された表紙と、限定版ではオッペンハイムの毛皮を思わせるフェイクファー加工されたものとなった。事あるごとにこの図録の表紙に触れると、展示会場や作品、お世話になった多くの人々を思い出している。手に触れるその感覚は痙攣的であり、また刺激的でもある。

会期:2007年7月21日〜 9月2日  宮崎県立美術館
本展は、埼玉県立近代美術館、岡崎市美術博物館、山梨県立美術館、姫路市立美術館を巡回

美連協ニュース126号(2015年5月号)から転載(※役職は掲載時)



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