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画家たちの二十歳の原点
土方明司 平塚市美術館館長代理
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「画家たちの二十歳の原点」
展覧会チラシ

 本展は2011年に開催した。展覧会の直接のきっかけは2008年に開催した河野通勢展にある。展覧会準備のため、河野が残した膨大なデッサンと手稿を調査し、その早熟な感性の発露に驚かされた。特に河野の長野時代、まだ岸田劉生の草土社に参加する前の20歳前後の作品には、青春期特有の宗教的感情と懊悩が濃密に感じられ圧倒された。河野通勢の初期作品にあれこれ思いを巡らせているうち、彼の影響を受け、20歳の若さで夭折した関根正二や、同時期に活躍し22歳でこの世を去った村山槐多の作品群が脳裏をよぎった。ちょうどその頃、テレビで成人式のニュースを見たこともあり、改めて大正と現代の時代精神の違いをぼんやり考えたりもした。違いは歴然としている。しかし、時代を超え共通するものもあるのではないか、とも思った。河野通勢、関根正二、村山槐多、ともに恋に人生に煩悶し、大正期白樺派を背景とする「霊と肉」の葛藤に苦しんだ。翻って現代の青春も難波田史男や石田徹也らを見るまでもなく、同じようにもがき苦しんでいる。人生においてもっとも多感でナイーブな10代の最終章、20歳という象徴的な時期は多くの芸術家にとって表現の原点であり、出発点といえるのではないか。関根や村山、難波田、石田のような夭折の画家ばかりではない。長命の画家たちの青春期の作品にも初々しく痛切な感性のほむらが秘められている。

 展覧会のタイトルは高野悦子の著書『二十歳の原点』からとった。高校生のころ、原口統三の『二十歳のエチュード』とともに影響を受けた著作のひとつである。高野のこの本は、著者20歳の誕生日から、半年後に自ら命を絶つまでの日々を綴った日記であり、彼女の死後、遺族によって出版された。モラトリアムの世代と呼ばれた僕の世代にとって、一世代前の学園紛争只中の青春である。この中で高野は「独りであること、未熟であること、これが私の20歳の原点である」と記している。

 幸いなことに同じようなテーマに興味をもっていた、下関市立美術館の濱本聡さん、碧南市藤井達吉現代美術館の木本文平さん、足利市立美術館の江尻潔さんとの共同企画となった。各自の興味と問題意識を何度も協議し、最終的に明治から現代まで、54画家120点の作品で構成した。画家たちの言葉を交えた画文集も求龍堂より出版できた。

 「20歳の頃は、何もかもがうまく行かなかった。だがその閉塞感の中で、どうしようもなく内から湧き起る、純粋な表現の衝動があった。―――略―――あの頃に戻れと主張したいのではない。大切なのは、あの頃の純度を保ちながら、いかに今を生き延びるかである」これは高野悦子と同時代、同じ京都で青春を送った、森村泰昌氏が本展に寄せたメッセージである。この言葉には企画者一同の想いも込められているように思う。

※会期・会場:2011年4月16日〜 6月12日  平塚市美術館
本展は、下関市立美術館、碧南市藤井達吉現代美術館、足利市立美術館に巡回

美連協ニュース121号(2014年2月号)から転載(※役職は掲載時)



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