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誌上のユートピア
近代日本の絵画と美術雑誌 1889−1915
橋 秀文 神奈川県立近代美術館企画課長兼普及課長
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神奈川県立近代美術館 葉山
展示風景

 本展は、神奈川県立近代美術館と、愛知県美術館、うらわ美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会との共催により開催されたものである。その意図するところは、19世紀から20世紀にかけての世紀の転換期に、目覚しく発展した印刷技術を背景に次々と生まれた日本近代の美術雑誌を紹介し、その美的な価値を再認識することにあった。また、同時代の日本近代の絵画も併陳することで、雑誌と絵画の相互関係にも探求の眼を向けてみた。この展覧会に際して、多くの所蔵家の方々からたくさんの作品・資料を借用させて頂いた。特に作品・資料を拝借するために小野忠重版画館に何度もお邪魔したことは今も懐かしく思い出す。人によっては、企画を聞きつけて、私の留守中に、美術館にたくさんの書籍を置いて行ってくれたご仁もおられた。絵画作品は言うに及ばず、こうした美術書籍を集めるうえで、様々な古書をこよなく愛する多くの人々に支えられて、この美術資料を中心とした展覧会が成立したのだった。

 印刷技術の発展と絵画芸術の展開を絡めて眺めることで、いかに19世紀末から20世紀初頭にかけて、視覚芸術が印刷物と共存しながらすそ野を広げていったかがよくわかる展覧会となった。写真と版画の関係も主従関係とは異なる不思議な交感がなされていることに、改めて驚きを禁じ得なかった。ただ、その技術の複雑さから簡単に結論を導き出すわけにはいかず、今もっての宿題となっている。

 このなかでも日ごろから注目していた詩人で絵もよくした北原白秋の芸術を再考する機会を得られたことが一番うれしかった。明治・大正・昭和前期にかけて活躍した詩人北原白秋が、当時の美術雑誌や装丁、挿絵の分野でもいかにユニークな仕事を成し遂げ、アートディレクターとして活躍していたかを論証してみた。特に、今まで見過ごされがちであった、詩という文字の表現と挿絵という視覚的な表現の密接な関係を読み解き、北原白秋の新たなる側面を提示することが可能となった。そして、この展覧会のカタログに掲載させて頂いた「アートディレクターとしての北原白秋」で美連協の論文賞を受賞したことは、存外の喜びだった。そのことも含めて展覧会で貴重な作品を快くご出品くださいました関係諸機関、所蔵家の方々、さらに、ご協力やご助言を賜った関係者各位に心より感謝申し上げたい。

※会期:
2008年1月26日〜3月9日 神奈川県立近代美術館 葉山
巡回:
2008年4月26日〜6月8日 うらわ美術館
2008年6月14日〜7月27日 愛知県美術館
主催:
神奈川県立近代美術館、読売新聞東京本社、美術館連絡協議会

美連協ニュース118号(2013年5月号)から転載(※役職は掲載時)



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