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トリック・アートの世界展
住谷晃一郎 高松市美術館美術課長
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「トリック・アートの世界展」高松会場より

 2011年5月、高松市美術館の「トリック・アートの世界展」は、26,443人の入場者を記録して閉幕した。この展覧会は、2006年夏に高崎市美術館で開催されたのを皮切りに、北九州市立美術館(2007)、川越市立美術館(2008)と単館で開催していたが、希望館が多くなったので2009年から本格的にバージョン・アップして巡回展を組み、豊橋市美術博物館を立ち上がりに全国9会場を巡回し、延べ295,951人を動員して終了した。

 最初にこの展覧会を美連協に企画提案した私自身、思いの外の盛況ぶりに何か狐につままれたような、気恥ずかしい思いでいっぱいである。というのも、もともとそんな高邁な考えのもとに企画されたものではなかったからである。

 事の起こりは次のようなことである。あるとき、「東京画廊の40年」という冊子をパラパラめくっていたところ、1968年に開催された「Tricks and Vision展」の記録写真に当館所蔵の堀内正和や関根伸夫の作品が出ているのに目がとまった。この展覧会は評論家の石子順造、中原佑介が企画に関わった画期的なものであったが、私は以前から、この展覧会に出品された高松次郎の「影」を始めとする実体のないトリッキーな作品群が、その反転として物質をそのまま提示する70年代以降の「もの派」につながったのではないかと考えていた。これにヒントを得て私は所蔵品で、トリック的な作品を集めて展示構成ができないかと思いついた。実際には60年代だけの作品では点数が足らず、上田薫の卵や金昌烈の水滴などスーパーレアリスムの作品も加え、2003年4月高松市美術館の常設展で開催した。

 2005年7月に美連協の企画会議が開催されたとき、「トリック・アートの世界展」を提案したが、当時の私は、トリック・アートと言ってもダリやエッシャーがあるわけでもなく、内容的にも戦後日本の現代美術でいささか観念的で面白味に欠けると思っていた。まさか企画を取り上げてくれる館はないだろうと考えていたところ、高崎市美術館に声をかけていただいた。翌年の夏休み向けの企画であったが、オープン当日、少し照れくさい一方で、何かうれしかったのを覚えている。開催していただいた美術館、ご協力をいただいた関係者の皆様に心から感謝をいたします。

※会期:
2011年4月15日〜5月29日 高松市美術館

美連協ニュース115号(2012年8月号)から転載(※役職は掲載時)



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