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思い出の展覧会
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「19世紀リヨンの栄光」展
山本敦子 岐阜県美術館学芸部長
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 1990年に岐阜県美術館開館8周年記念として開催されたこの展覧会は、コンセプト作りも含めて筆者が手がけた最初の西洋関係自主企画展である。8周年というのがなぜ節目として通用するのか、というのは誰でも抱く疑問だが、それが当時は大した問題にならず予算がついたところに時代を感じる。

 この展覧会は、19世紀リヨン派を実際の美術作品によって日本に紹介した最初の企てである。岐阜県美術館はルドン・コレクションで知られている。ルドンがその無名時代にリヨン出身の芸術家や学者と接触していたことは周知のことだが、リヨン派そのものについての一般認識はかなり乏しいと言えるだろう。独特の幻想絵画を創造したルドンの形成に、ボードレールによって「哲学的芸術」と揶揄されたリヨン派との遭遇はどんな役割を果たしたのか、それを探るにはまずリヨン派を知らねばならない、と考えた。

 ビギナーズ・ラックというか、この展覧会の準備は思いの外スムーズだったが、その最大の理由は眼の付け所が良かったことだと思う。フランス国内ですらポピュラーとは言い難い地方画派を主題にすることで、特にリヨネ地方を中心とするフランスの美術館や個人所蔵家の理解と支援をいただくことができた。当時の学芸係長と一緒に最初に訪問したリヨン美術館で、リヨン派の研究者アルドゥアン=フュジエさんとエティエンヌ・グラーフさんを紹介してもらった。このお二人からいろいろ教わりながら、リヨン派というコンセプトでなければまず訪問することはないだろういくつかの地方美術館を訪ね歩き、作品の借用をお願いした。その中にむしろ現代美術の世界で著名なサン=テティエンヌ近代美術館があり、この美術館との接触は4年後の「シュポール/シュルファス」展ともの派の展覧会との交換展につながった。

 新幹線でパリから南下する途次、リヨンで下車しそこねて終点のグルノーブルまで連れていかれ、車掌に「グルノーブル・オリンピックはとっくに終わったんだよ」とからかわれるなど、失敗は数限りなくあるが、それも含めて良い経験であった。フランスでの全行程をつきあってくださったパリ在住のコーディネーター、小林さんに、この場を借りてあらためて感謝申し上げる。リヨン展は、自主企画の海外展を準備する際、現地の事情を熟知したコーディネーターの存在がいかに重要か、痛感した機会でもあった。

※会期:
『19世紀リヨンの栄光』展 1990年7月20日〜9月2日 岐阜県美術館

美連協ニュース107号(2010年8月号)から転載(※役職は掲載時)



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