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11トンの鉄彫刻吊るす天井 意表つく建築、展示・・・
酒井忠康 神奈川県立近代美術館長
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フランク・0・ゲーリー設計、グッゲンハイム美術館、ビルバオ 外観

 先年、ビルバオ(スペイン)に開設されたグッゲンハイム美術館を訪ねる機会があった。

 美術館の建築デザインとして、いろいろと話題を投じていたので、いささか期待するものがあったのは事実なのだが、内部の展示空間にデッド・スペースが多く、その点は大いに疑問に思った。しかし、こんなのが一つくらいあってもいい、と帰国してから喋ったりしていたのは、あまりに派手な建築の外観にショックを受けたからではなく、日本の美術館建築が、どこもかしこも類型的で特徴がないことにたいして、ちょっと嫌味をいっておきたい、そんな気分にもなっていたからである。

 よくよく考えると、このグッゲンハイム美術館は異様な建築だ。また維持管理もたいへんだろうと思った。しかし、まあ、世界中から人が押し寄せて、結構、町興しの役に立っているのだから、私のようなものがとやかくいう必要はないのかもしれない。

 いずれにせよ、外観の派手さに目を奪われて、内部についての印象が希薄になっていたのは否定できない。頼りないといえば、その通り。しかし、日頃から気になっていた建物の構造が、どれだけの“重さ”に耐えられるのか、ということに関して、私は目から鱗が落ちる……といえるような体験をした。

 折から、鉄彫刻といえば、この二人と相場の決まっているエドゥアルド・チリーダとリチャード・セラの展覧会が開催されていた。そのことを知らないで訪ねたから余計に驚きは大きかったのかもしれない。

 二人の彫刻は巨大な鉄塊と分厚い鉄板の作品である。しかも桁違いに重い。だから展示するのは容易なことではない。そんなことが脳裏をよぎったのだ。数年前に、私どもの美術館にセラがきたときのこと(ピュリッツァー夫人と一緒に蓑豊氏の案内で来館)が、咄嵯に思い浮んだのは他でもない。雑談に時を過ごしていて、セラが「ここでは、ぼくのデッサン展しかできないね」という話になって苦笑いしたことがあったからだ。

 そんなこともあって、グッゲンハイム美術館を訪ねた私は、あらためて彫刻の“重さ”ということを意識したのである。

 とくにチリーダの天井から吊された作品をみたときの驚きは恐怖といってよかった。これは尋常ではないと思った。担当学芸員が書いている小冊子に目を通して、さらに驚いた。何と“重さ”十一トンまでしかこの美術館は吊り上げられないので、ほかにも展示したい作品はあったけれども断念したのだ、と書いているのである。

 私は信じられなかった。何もかも“人力”で賄わなければならない私どもの美術館(エレベーターがない)だったら、きっと“重さ”十一トンもの彫刻を吊り上げることができた、と自慢するに違いないからである。

美連協ニュース72号(2001年11月)から転載 (※役職は掲載時)



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