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美術館の肝―コレクション展の意義
菅 章 大分市美術館長
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大分市美術館「芸術都市の水脈展」展示風景

 私が勤める大分市美術館は大分市の中心部からほど近い緑に囲まれた小高い丘の上にある。開館17年目を迎える当館は田能村竹田の国指定重文作品をはじめ日本画の福田平八郎、髙山辰雄、洋画の佐藤敬、宇治山哲平、竹工芸の生野祥雲斎、現代美術の吉村益信など大分ゆかりの作家を中心とする3千点を超える作品を所蔵している。

 この春、市内中心部に大分県立美術館(OPAM)が開館した。昨年プリツカー賞を受賞した坂茂氏の設計による延床面積1万7千平米に迫る、地方都市としては大型の美術館だ。全面ガラス張りの折戸が開閉するユニークな建築は都市型という立地も含め、街のランドマークとなりつつある。そして開館記念展は「モダン百花繚乱 大分世界美術館〜大分が世界に出会う、世界が大分に驚く〜」というタイトルで国内外の有名美術館から巨匠の名品を借用し、大分の美術と出会わせるという内容である。OPAMは前身の大分県立芸術会館から引き継いだ約5千点のコレクションがあり、世界の名作と出会うための駒にも事欠かない。

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大分市美術館「芸術都市の水脈展」展示風景

 話題集中のOPAMに対し、建物の新しさ、規模、収集点数、立地など多くの点で分が悪い当館が、この時期の特別展として打ち出したのが全館を使ったコレクション展である。なぜ、地味(?)なコレクション展なのか。もとより、どんな企画展を持ってしてもOPAMのゴージャスさに対抗できるものではない。ならば、余所行きの巡回展より館の存在意義を正面から問うコレクション展の方が潔いのではないか。それは収集・保管、展示、調査研究、教育普及といった美術館活動の肝であり、熟知した作品による最高、最上の企画展であるべきだという思いとも重なる。この千載一遇のチャンスに、学芸スタッフのサポートを得て、自ら13年ぶりの担当を買って出た。題して「大分発アヴァンギャルド 芸術都市の水脈〜田能村竹田からネオ・ダダまで〜」。江戸後期の豊後南画から戦後の前衛美術を代表する「ネオ・ダダ」に至る、各時代における優れた美術家の輩出とその革新性に注目し、大分の風土が育んだ特質を広い意味でのアヴァンギャルドの系譜としてとらえ、芸術都市に流れる破壊と創造の水脈を約400点で紹介した。

 予想通りというべきか、コレクション展の観覧者数は伸び悩んでいる。それでも、県と市の美術館が、異なった手法で、地域の美術の素晴らしさを発信することの意義は伝わり、来館者にはことのほか評判がいい。OPAMの「モダン百花繚乱」に「アヴァンギャルドの水脈」を対比させることによって芸術都市大分の記憶と未来に向けたストーリーを感じ取ってもらえれば幸いである。

美連協ニュース127号(2015年8月号)より転載(※役職は掲載時)



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