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リレーエッセイ
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ボクはネリビー
若林 覚 練馬区立美術館長
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ボクはネリビー。練馬区立美術館(練美)のロゴ・マークから生まれた。
そもそもロゴ・マークなんてなかった。
ある時はゴシック、ある時は明朝で器用に使い分けていた。
これではいけない、今時ロゴ・マークのない文化施設なんて…。
どんな組織にもロゴ・マークはある。
ないとしたら、よほどデザイン意識、PR意識、経営感覚のない経営者だろう。
みんなの家にだって、家紋というロゴ・マークはあるじゃないか。
ルイヴィトンは家紋を参考にデザインを作り、一世を風靡した。

てなわけで、5年前ボクの生みの親〈かんちょう〉がサントリーから来た時、ロゴ・マークづくりから始めた。
サントリー、リクルート、虎屋、NTT、西武百貨店などのロゴ・マークやキャッチフレーズをつくった、旧知のデザイナーたちが〈就任祝い〉に駆けつけてくれた。
さあこれから最高のロゴ・マークを作るぞ、と気合を入れた時、待ったがかかった。
「随意契約はいけない、公募にしなさい」と。
泣く泣く選定委員に廻ってもらった。選ばれた作品に手を加え、リファインした。
精度の高い使用マニュアルまでできた。

作業の途中、「西武のお買いものクマさん」を作ったデザイナーが「このマーク、手足と目をつけたら面白いね」と言って、ほんの数分で生まれたのがボクだ。
普段だったら、4桁のギャラのデザイナーたちに2桁の真ん中ぐらいしか払えなかった。
民間だったら、予算はあってないようなもの、いい仕事に予算はついてくる。
それが革新を生み、新たな発展の原動力になる。が、予算は予算だ。
途方もない〈就任祝い〉となった。

さて、そのボク、ネリビーからのお知らせ。
練美は1985年10月にできた。今年で30周年を迎える。
これを機に、「美術の森緑地」と呼んでる美術館の前庭が新しくなる。
2000㎡とそんなに広くないけど、ここに天然芝を敷きつめ、32個の幻想的な動物たちの彫刻を置く。
3つの入り口にはボクが立ち、お客さんを迎える。

少し仲間を紹介する。
ゾウ、ライオン、ゴリラ、トラ、キリン、サル、イヌ、ネコ、カメ、トカゲ、トンボ
それから何と植栽で、クマや「ネリマ・ウマ」の親子〈ネリマ―マ〉までできる。
緑のクマは正面入り口で「美術の森緑地 幻想美術動物園」の看板を持って、4mの高さで立ち上がっている。
美術館の入り口には、テカテカに磨き上げたブロンズ彫刻「写るもの」ができる。
微妙にゆがんでいて、彫刻に写った姿かたちから「あなた、わたしはどんな動物なんだろう」と問いかける。

全ての彫刻が、触っても、坐っても、登ってもいい。遊べるアートだ。

「動物感覚をとぎすます道」もできる。
長くはないけど、高くなったり、低くなったり、いろんな素材でできていて、とてもカラフルだ。
これは歩けるアートだ。

この緑地、だいぶ壊れていたんだ。〈かんちょう〉が初めて美術館に来た時「これではいけない。美術館は内も外もアーティスティックじゃなきゃ」と言って、提案したのが始まり。
それから5年、「予算は予算」を乗りこえて、やっとこの3月末にできる。
案内役のボクも忙しくなる。
みなさん、ひやかしに来てください。

それから、もう一つお知らせ。
30周年を記念する企画展3つ。
少し襟を正して事務的に紹介する。
1.没後100年小林清親展 (4月5日〜5月17日)
2. 舟越保武彫刻展―まなざしの向こうに (7月12日〜9月6日)
3.アルフレッド・シスレー:イル=ド=フランス、川のある情景(仮称) (9月20日〜11月15日)
1は静岡市立美術館で好評開催中。2月22日NHK日曜美術館45分枠で放送された。
練美には50点を超える寄託作品がある。
2は「美連協」さんのお世話で、岩手県立美術館、郡山市立美術館を廻って練美に来る。舟越は、若い時、練馬に住んでいた。
3は練美初の印象派展。国内公私立美術館所蔵作品を中心に構成。単独開催。まとまったシスレー展は2000年以来。

〈かんちょう〉はかって、広告や文化事業だけでなく、会社の社長をやっていたこともあって、美術館経営にもコミットメント(目標・約束)が必要だと言っている。
2つの30周年事業、心中記するものがあるようだ。
手足や目をつけてもらって生まれたボクが、今度は〈かんちょう〉の手足や目になる。
それがボクのコミットメントだ。

美連協ニュース126号(2015年5月号)より転載(※役職は掲載時)



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