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地方美術館の高望み
澄川喜一 島根県立石見美術館長
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上:美術館ロビー
下:水盤のある中庭は憩いの場として愛されている
設計:内藤廣

 今年の島根県は出雲大社の60年ごとの遷宮の年に当り、また古事記1300年の記念事業など歴史の節目の年で多くのお客様が来県されました。島根県は東西に細長い地形の中に島根県立美術館(松江)、くにびきメッセ、古代出雲歴史博物館、自然館ゴビウス、三瓶自然館サヒメル、しまね海洋館アクアス(浜田)など多くの文化施設を擁しています。そして最西端の益田市には私ども石見美術館といわみ芸術劇場との複合施設、島根県芸術文化センター グラントワがあります。

 県民70万人に対して県立の文化施設が7館ありますから県民10万人に1館となります。それぞれの施設はそれぞれの地域の強い特徴をもっています。益田市の石見美術館は十数年前、石見地域に是非美術館をという益田地域の女性グループの熱心な運動が発端となり開館しました。建物は地場産業の石州瓦を全面に使った独特なデザインが大変好評で見学者が絶えません。市民の熱意あるボランティア活動も続いており100人を越すメンバーに支えられています。

 来館者がよく眼にされる施設内のあちこちに(トイレまで)生花が飾られているのはボランティアのみなさんの毎日のご配慮のお陰です。これこそ地域密着によるおもてなしの大切な心の表われと思います。

 開館当初「なんとなく敷居が高い」と云うお客さまの声がありました。しかし当館は全館敷居の無いバリアフリーの設計で出入りしやすい構造の筈でしたが、職員の接客の不慣れとお客さまも初めての美術館やホールに不慣れなのではと気がつきました。が「お客さまは神さま」と職員全員が十二分に意識することになりました。美しい美術作品や音楽に触れる前に最初に出会うのが実は担当する職員ですから笑顔の挨拶を欠かさず職員は廊下のセンターラインは歩かないよう、館全体が親しみのある魅力的な雰囲気をつくり出す「姿勢」が出来るのが理想です。しかし、云うは易く…です。お互いに気を付けるほか仕方はありません。お陰さまで芸術文化センターは開館8年目で間も無く300万人のお客さまを迎えます。誇り高き地域を目指すための美術館として、石見出身の森鷗外ゆかりの美術家を中心とした明治・大正期の美術と、同じく石見出身の森英恵を中心にしたファッション、そして石見地方の美術、文化を三本の柱としています。雪舟終焉の地でもあり室町時代に栄えた益田市は現在は人口5万人の地方都市です。これからは県境や国境を越えた文化交流が広く展開出来るよう地域密着を原点にしつつ高望みを夢想しております。

美連協ニュース120号(2013年11月号)より転載(※役職は掲載時)



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