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「ジャクソン・ポロック展」開催に思うこと
村田眞宏 愛知県美術館長
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ジャクソン・ポロック展会場 2011年11月 愛知県美術館

 東日本大震災の発生や台風被害、記録的な円高による経済への影響など、公立美術館を取り巻く環境は厳しさを増すばかりである。被災地の美術館のご苦労とは比べものにならないものの、当館でも大震災の影響を受けてきた。夏に予定していたプーシキン美術館展が中止となり、その代替として、所蔵先に特別な協力をいただき「棟方志功展」を開催するなど、4月以降、大震災によって引き起こされた事態への対応などに追われた。そんな状況ではあっても、スタッフには「ピンチはチャンス!とにかく元気を出して前向きに取り組んでいこう」と呼びかけながら、これまでを何とか乗り切ってこられたように思っている。

 当館では今、全国的にも注目していただいている「生誕100年ジャクソン・ポロック展」を開催している。この会報が加盟館に届けられる頃には、東京国立近代美術館に会場を移して開催されているはずである。日本初、世界的にもそう簡単には実現できないとされるこのポロック展を、私は、ある思いをもって迎えた。この展覧会は、読売新聞社主催のもとで準備が進められ、開催に至ったわけであるが、実は、その実現にあたっては、美連協に一つの決定的な役割を担っていただいた。というのは、当館で、この展覧会を中心になって担当した大島学芸員が、事前の企画提案もなく美連協恒例の企画会議に参加させていただいた折、「何か具体的な企画案を」という事務局からの要請に応えて「ポロック展を開催する準備がある」と発言したことからこの企画は動き出したのである。彼は、ポロックの専門家としてすでにしかるべき研究業績もあり、当館に職を得てからは、何時かポロック展をやりたいと自分なりに企画を検討し、また実際に提案もしていた。しかし、そもそも作品を集めることができるのかという見通しからも、経費の面からも簡単には判断ができないため、具体的には動きが作れずにいた。彼から、ポロック展をやりたいと相談されても、その予想される困難さに「何時か実現できれば‥」としか答えられなかった。ところが、その美連協の企画会議の場での、彼のポロック展の提案を評価してくださった担当理事の方々にも応援をいただき、その結果、読売新聞社の主催企画として開催に向けた準備が始まることになった。私は、この展開をみて、物事なんでも積極的に取り組もうとする姿勢が何よりも大切であるということを改めて痛感したしだいである。もちろん、実際の開催準備には、少なからず困難なことがあったものの、読売新聞社、東京国立近代美術館との連携のもと、さまざまな問題をクリアしながら無事に開催することができた。生誕100年という年であっても、ポロック展を開催するのは日本だけであるし、さらに代表作を含めて、初期から晩年までの作品をそろえた回顧展と呼ぶにふさわしい展覧会が実現できたことを、本当にうれしく思っている。

 美術館を取り巻く環境が厳しさを増すなかで、その運営にあたっていると、つい考え方や物事に取り組む姿勢も縮んでしまいがちになる。しかし、こんな時だからこそ、ポロック展同様に、これまでにもましてポジティブな姿勢でやっていかねばと、気持ちを新たにしている。

美連協ニュース113号(2012年2月号)より転載(※役職は掲載時)



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