読売新聞へようこそ■イベント
美術館連絡協議会 美連協について English 美術館連絡協議会
-
リレーエッセイ
バックナンバー
美術館建築の改修を前に
西村勇晴 北九州市立美術館長
picture
北九州市立美術館全景

 これを書いている時点であの3月11日の東日本大震災から2ヶ月以上が経過している。地震・津波の被害からの復旧・復興は緒についたばかりであるし、福島原子力発電所事故は全く予断を許さない。

 連日の報道に心を痛め、また様々な感慨をいだきながら接しているが、被災地から遠くにある美術館として何ができるのかという思いとは別に、この災害をきっかけに当美術館の建物に考えをめぐらすことが多くなった。

 北九州市立美術館は1974年の開館であるから、その歴史はすでに36年が経過している。昨年度、美術館には構造体の耐震性に合格判定が出た。しかし設計は宮城県沖や阪神淡路の大震災以前であり、新しくみえる外見とは裏腹に、老朽化も進行している。

 北九州市内には小倉東活断層が存在する。これまでの活動間隔は約8500年で、最近の活動が約2200年前であったという。確率的に言うと、東北地方と比較しても、地震が起こる可能性は格段に低いとされる。だが、2005年、それまで地震空白域とされていた玄界灘で福岡県西方沖地震が生じ、主として福岡市内の美術館、博物館にもかなりの被害をもたらした。そして今回の未曾有の規模の地震は、このような天災が確率や周期の問題ではないことを教えてくれた。

 さらに昨年の5月、政府の地震調査研究推進本部によって、これまで地上で確認される12キロの小倉東活断層は、地下に隠されている部分も含めると20キロ以上の長さであることが確認された。この断層ではひとたび地震が起これば最大マグニチュード7を超え、推定される地震のエネルギーは以前考えられていたものの2倍以上になると指摘されてもいる。老朽化が進んでいる現状の建物で観客や作品を守れるのかという懸念が生じてくる。

 美術館は2014年から建物の改修に入る計画である。それまでに危機意識を持って館運営に望みたいし、少なくとも展示や収蔵などに地震への備えだけはしておきたい。

 原発事故による電力不足の問題から、計画停電も取り沙汰されている。これを契機に私たちには電気を大量に消費するこれまでの生活スタイルを変えていくチャンスを与えられている。このことも改修の際に考えられないだろうか。

 これからは自然エネルギーによる発電もさらに研究、開発されるだろう。また電力会社だけに頼るのではなく、地域発電、個別発電ということも考慮に入ってくるだろう。改修計画の中では耐震性能の向上のほかにも、断熱性能をより高めたり、省エネ型の照明器具を導入したりすることはもちろんだ。さらにできうることであれば現在は灯油を熱源としている空調設備も電気にかえ、太陽光発電などで個別発電に寄与できたらと望んでいる。北九州市は環境モデル都市に選定されているのでなおさらのことであろう。

美連協ニュース111号(2011年8月号)より転載(※役職は掲載時)



-
美術館連絡協議会 〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞東京本社事業局 TEL.03-3216-8664 FAX.03-3216-8978