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リレーエッセイ
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市民にとっての美術館とは―火の国熊本から
桜井武 熊本市現代美術館長
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安本亀八《相撲生人形》1890年
170×150×160cm(高さ×幅×奥行)熊本市現代美術館蔵

 熊本市現代美術館の館長に着任して3年が経ち、そして美連協に加盟して1年が経過した。この加盟により新しい情報が入るし、心強い協力も得てきた。またこのリレーエッセイでは、地方美術館館長の様々な苦労が語られ、大いに参考になっている。悩み事はいずこも同じ、我が館でもより多くの市民が来館してくれることを願い、館内で知恵を出し合い、工夫を凝らし、また試行錯誤も重ねてきた。

 美術館長には色々なタイプがある中で、もし協調型と言うタイプがあるとすれば、我が館にはそれが相応しいと考え、力を合わせることに努めている。協調は、必ずしも話し合い等によって共通点や妥協点を探し出す作業ではなく、対話によりスタッフの創造性と想像する力を引き出すことに意味があると思われる。

 公立美術館は第一に市民や県民のための施設であり、彼らとどのように繋がるかによって存在意味や価値が築かれる。

 人口73万都市熊本の現代美術館では、実感として、観客である市民の視線や反応が肌で感じ取れる。つまり観客の顔が見えるのである。

 一方、距離が離れるほど、中央である東京から地方は見えにくくなる。それに反比例するように、その離れた距離から、中央の姿がくっきりとリアルに見えることもある。たとえば今話題の国家補償制度。ヨーロッパでは、国家間の緊密でより高度な文化交流を目指して、EU加盟国は積極的にこの制度を活用してきた。日本において国家は、この制度によって誰のために何を補償するのか、議論がなされたことと聞く。しかし文化的密度をあまねく高めるため、まずはすでにある国立を始めとした国内美術館所蔵のすぐれた作品が、この制度によって、全国的に広く見ることのできる機会となることを強く期待したい。

 熊本市現代美術館では、視点を現代に据え、領域や時代を超え、意欲的な展覧会を自主企画として開催してきた。この春には九州新幹線開通を記念して、熊本にゆかりのある「水・火・大地」をテーマにしたグループ展を開催。そして夏には、日本が変革のインパクトであり続けた、20世紀初頭から現代までのファッションの流れを見せる企画展を予定している。

 また熊本市現代美術館のコレクションには、異色の逸品である熊本出身の安本亀八の「相撲生人形」がある。時代の変化にもまれながらも、1890年制作のこの作品は、現代に強烈なエネルギーを放射している。

美連協ニュース110号(2011年5月号)より転載(※役職は掲載時)



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