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地域公立美術館像を求めて50年
嶋崎 丞 石川県立美術館長
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平成20年10月に開催したリニューアルオープン記念展「玉虫厨子と法隆寺の工芸展」に集まった人々

 私が現在の石川県立美術館の前身である石川県美術館の開設準備室に入ったのが、1959(昭和34)年であったので、本年で美術館生活が半世紀を越えたことになる。あっという間の50年であった。

 ご承知のように金沢のまちや石川県は、江戸時代以来今日までこれという災害や戦禍に会っておらず、400年の歴史のなかで培われた見事な文化が遺っており、それをベースにして育くまれた現代の作家活動も盛んである。

 こうした地域に設立する公立美術館はどうあるべきかが、設立時に議論されたのは当然であった。これという特出する文化が存在しない地域ならいざ知らず、伝世した文化財や作家活動で生み出された優れた作品が存在する石川県の地域では、そうした優れた芸術文化を生かした美術館づくりを行うべきであり、それが地域公立美術館の使命役割であると結論づけられた。こうした考え方は今日でも受け継がれ、「地方色豊かな美術館づくり」は、運営の第一の柱となり、約一万点の作品を所蔵する美術館にまで成長してきた。

 このことはコレクションを中心とする常設展の在り方の問題であることは論をまたないが、美術館の活動はコレクション以外の優れた美術品の鑑賞の機会、いわゆる企画展を地域の人びとに提供することも重要な仕事であることはいうまでもない。そのために美連協が発足し、当館も設立当初から参加した。当館は、昭和34年以来、企画展はあくまでも自主企画を中心として運営しており、外部からの企画展の持ち込みは、当館の使命に合致した余程のものでない限り受けないことにしてきた。幸い北陸には美連協のオーナともいうべき読売新聞社の北陸支社が富山県の高岡市にあり、支社の事業部が美連協の企画を受けて当館で企画展を開催して頂いたので、会員館としての面目を保ってくることができた。

 自主企画として思い出に残る展観は、昭和44年開館10周年を記念し、宗達光琳派の名作を一堂に集めた「琳派の芸術展」、県制百周年を記念し、昭和47年に開催した等伯の基本作品を集めた「長谷川等伯展」、古九谷大皿百点を展観した「古九谷名品展」、開館20周年を記念し、徳川美術館と五島美術館所蔵の国宝源氏物語全巻を公開した「国宝源氏物語絵巻展」など、現在でも話題を呼ぶ展観を旧館時代にすでに開催している。

 昭和58年の新館になってからは、「桃山時代の障屏画名作展」、「松田権六展」、「野々村仁清展」、法隆寺の「百済観音展」「玉虫厨子と法隆寺の工芸展」など、開催困難な展観を所蔵者のご協力があったにしろ、よくぞここまでやってこられたと思っている。

 いずこの館も同じであるが、予算が次第に厳しくなってきており、今後はコレクションを生かした展観の工夫と教育活動により力を注ぐべきだと思っている。

美連協ニュース107号(2010年8月号)より転載(※役職は掲載時)



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