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シャガール コレクション10年で充実−クレーらの作品 収集強化
谷 新 宇都宮美術館長
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パウル・クレー《尊大》1926年 水彩・インク,厚紙の上に紙 21.1×21.1cm(本紙)宇都宮美術館蔵

 もうとっくに旬を過ぎているのに、この原稿の話が出てきた。たまに関心のある記事があると読むくらいの、決して熱心な読者ともいえないのだが、この会報も以前よりは大判で読みやすく、図版もカラフルになった。

 80年代、美術館の開設が、全国で年に平均10館程度増えてきたことを思えば、その建設ラッシュに肝心の美術館運営のノウハウや、そもそも企画展がついていけないという問題は確かに起こり、そういった必要性も背景にあって美連協が重宝がられたのは言うまでもない。実際、美連協には開設間もないころ本当にお世話になった。学芸員は優秀とはいえ、なにしろキャリアに乏しい。確か、最初のころは、年に6回の企画のうち5本までが美連協がらみということもあった。

 そのころは企画展立ち上げの苦労はおろか巡回館へのお手伝いまで引き受け、相当人のよい美術館としてイメージされたわけだが、近年は自主あるいは少数館巡回というケースも増えてきた。2012年は開館15周年に当たるが、自主的な性格の企画が多い。

 1995年、忘れもしない阪神淡路大震災が1月に起こり、4月、宇都宮の準備室に向かう直前には地下鉄サリン事件が世間を恐怖に落とし入れた。突然展示ケースや移動壁などの構造を強化することを要請されたのもそのためだ。美術館の周囲の森は宇都宮に残された数少ない自然の森ということもあって、環境保全に配慮しつつ工事を始めたのはいいが、冬の最中、近くの森でオオタカの営巣が発見され、それで工事が半年も遅れた。また開館半年前には館長予定者の高見堅志郎市政顧問が急逝したこともあり、まさに波乱の幕開けだったわけだが、よくぞこれまでやってこれたものだとも思う。

 多少自慢話でもさせていただきたいが、このご時世でまだ作品収集予算がついている。これには基金と毎年の一般会計予算の両方があるが、後発の割にしっかりとコレクションを築きえたのもそのためである。やむなく企画に穴が空いても、展覧会が開催できる。

 準備段階では《静物》1点しかなかったシャガールは、版画集に収められた作品も含めると10年で302点ものコレクションになったが、これなどは十分企画展として成立しうる。西洋近代はもう一つバウハウスを軸にした柱があるが、クレー、カンディンスキーらのコレクションも充実してきた。図版はクレーの《尊大》だが、この作品ほどクレーのバウハウスにおける心理的背景が造形理念に仮託された例もめずらしい。またバウハウスと関連するが、「生活と美術」という柱で近代から現代の内外のデザインを収集してきた点も他館には見られない特徴である。

 もう一点、「トビダス美術館」(出張授業)は相当クオリティーが高い。学校関係では今年「Re+Collections」(小中学生による学校所蔵品再発見プロジェクト)という企画もあった。学校に眠る美術品を調査し、子供たちがそれで展覧会を開き、作品解説までするのである。持ち出せるコレクションによる「サテライト企画展」(市中心部)も始まった。また今年度は期初に文化会館と財団統合したが、先の企画では文化会館所蔵のチェンバロによるバロック音楽を聴いてもらって好評だった。事業をこまめに見ると結構活動的なのである。

美連協ニュース105号(2010年2月号)より転載(※役職は掲載時)



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