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我らコンビニ的美術館
中野政樹 ふくやま美術館長
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ふくやま美術館の外観(左側の彫刻作品は高橋秀の《愛のアーチ》)

 国立博物館は国を代表する総合博物館であり、県立博物館は地域に密着し活動する地方文化センター的役割を持つといえる。博物館・美術館は一様ではないが、観客に対し幅広い対応という点ではデパート、スーパー、コンビニと変わらない。

 国立博物館のような総合的で国家を代表する博物館を大デパートとすれば地方の博物館や美術館は地域と共存する小回りの利くコンビニ的性格をもつ。かつては、博物館は人を寄せ付けない威厳と格式を備えていたが、今や大学が新入生を選ぶ時代から勧誘する時代に変化したように博物館・美術館も客を呼び込む努力をしなくてはならなくなった。

 最近、我が家の近くにコンビニが開店し、いつも学生客で賑わっている。コンビニは手軽というだけでなく、何よりも明るく清潔な環境が良い。一度コンビニを経験するとトラウマとなり夜店を冷やかす気分で入ってしまう。デパートよりもコンビニが盛況なのはわからないでもない。大きな変化である。

 ふくやま美術館を日本経済新聞の文化欄で日本の公共美術館のA級にランクし「我らは街のコンビニ」というタイトルで、地方の環境に順応した美術館であると評した。コンビニ的美術館とはいえ小回りするだけでなく視野を広げ現代に対処すべきである。一方、ふくやま美術館もコンビニ的美術館というからには人々がコンビニに行くような気安い場所にしたい。

 気楽に入ってロビーで寛ぐもよし、常設展を鑑賞するのもよし、名品をじっくりと鑑賞して帰るのもいい。静かな図書室で自由に豪華本を見るもよい。散歩の途中に美術館に入り皮張椅子に腰掛けゆったりとした気分で考え事をするのもいい。トイレも清潔で料金もかからない。このような環境を市民は利用しない手はないといえないだろうか。公立美術館は市を象徴する顔である。金がなくても出来る余裕と楽しみを満喫できる憩いの場として美術館を利用していただきたいとおもう。

 近年、入場者の増減が美術館の業績のバロメーターとなってしまった。指定管理者制度の導入が拍車をかけたともいえる。文化活動でもある美術館は長い目で判断しなくてはならない。入場者の数によってすべて評価される最近の傾向は美術館本来の存在を誤ることとなる。中小の地方美術館は不況の嵐に見舞われ、いずれの美術館も予算不足に悩んでいる。

 学術研究は不況を払い飛ばす企画の原点である。中小美術館はここに活路を見出すべきであろう。

 美術館全体は城郭であり、予算は兵糧、学芸部は戦闘員、管理部は補給員という。理想とするところは市民が自慢でき、館員にとっては全エネルギーを投入して悔いない、生き甲斐のある仕事のできる美術館であることにつきる。

美連協ニュース102号(2009年5月号)より転載(※役職は掲載時)



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