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県美と私、この頃
守安 收 岡山県立美術館長
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岡山県立美術館外観(設計:岡田新一)

 館長就任3年目。この3月までは6年間大学教員を兼職していました。もっとも開館(1988年3月)前の準備室、その前の整備プロジェクトの頃から今まで一度も離れたことのない職場なので、館のことは良きも悪しきも大抵のことがわかります。が、それが館や館員にとってプラスばかりでないことも自覚しており新たな取り組みを心掛けてマイナス部分を圧倒したいと思います。

 さて、もうすぐ開館30周年。「岡山のことは岡山の人間が一番知っているはずだ」という当時の知事の信念から経験値の乏しい地元の人間ばかりで準備が始まりました。以来、郷土ゆかりの優れた芸術家の作品収集に徹して常設展示するというきわめてローカルな基本方針を堅持しながら運営してきました。何とか今に至ったのは美連協をはじめとする関係各位の協力の賜物です。この機会にお礼申し上げます。

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カルチャーゾーン+県美 アートカード100
活用ガイド(表紙)

 館は岡山市街地の狭いエリアに12の美術館や博物館、図書館、シンフォニーホール、特別名勝後楽園等々、多様な文化施設が併存する岡山カルチャーゾーンの一角にあります。全国でも希な濃密な文化空間で、協調して市民や観光客に対応しています。ただ博物館施設に限れば、特別展でA館が入ればB館が減るといった状況で、ひとつのパイを切り分けているような有様です。ゾーン全体の相乗効果がなかなか見えてきません。共通券の発行も経営母体や特別展毎の運営主体の違いが難点です。私どもでは岡山市立オリエント美術館と「おとなり美術館」と称して相互割引制度等を導入しましたが、もっと利用者本位の観点からあの手この手を使って課題の解消を目指す他ありません。

 一方、岡山県博物館協議会という歴史、美術、民俗、自然等の館種も規模も運営母体も問わない団体の会長館として事務局を担っています。83の加盟館をゆるやかな連帯で結び、賛助会員制度を導入して博物館マップの作成、研修会等を開催しています。25周年を迎えた昨年度は、スタンプラリーや人的交流事業も実施しました。後者は加盟館の学芸員を対象に講座・講演の講師やワークショップの指導者として各館の希望に応じて派遣するという試みです。派遣する館は出張扱い、受け入れ館は報酬ゼロ、事務局はその仲介をして旅費を負担するという方式で、計19会場、延べ32の独自企画を実現することができました。加盟館同士がふだんから良好な関係を維持していることに加え、学芸員たちが別に「岡山学芸員会議」というサークルをほぼ30年間継続しつつ100回を超える例会を開いて意思疎通ができていたことも大きいと考えます。

 またここ10年ばかり「学校と美術館の連携事業」にも励んでいます。この8月にはその一環で「シンポジウム 学校と美術館 アクセシビリティを高める多角的・多面的な活用」をテーマに掲げて、講演や事例発表、共同討議等を実施したところです。当館からは美術館教育素材「カルチャーゾーン+県美 アートカード100」や「実物大複製画《桃太郎絵巻》」を使った活用事例を報告しました。

 最後に、個人的なことを。ライフワークとして浦上玉堂父子のことをまとめるつもりです。関係情報の提供をよろしく。ともあれ、作品と向き合うことは何よりの喜びですが、思わぬ人やものとの出会いも楽しく、逆風に直面する地方公館立館の運営に苦慮しながらも美術にかかわることの幸せを実感しています。

美連協ニュース136号(2017年11月号)より転載(※役職は掲載時)



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