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第34回 「心に残る医療」体験記コンクール 〜あなたの医療体験・介護体験を募集します〜

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第34回入賞作品

<小学生の部> 最優秀賞

時計をもたないぼくの先生

藤原 将眞(ふじわら のぶまさ)(8)千葉県

ぼくにはわすれられない先生がいる。先生のところにかよったのは、ようち園生の時だ。ぼくは、今小学校2年生。2年以上も前に会ったお医者の先生で、今は会っていない。それでも、よくおぼえているんだ。

ぼくはようち園生の時に、大しっぱいをしてしまった。お砂ほりをしていた時、む中になりすぎて、ふり上げた時にお友だちにスコップをあててしまった。そのことがりゆうで、おかあさんがお友だちのおかあさんからどなられているところを見た。ようち園の先生からも、「しつけがなっていない」と、何日も呼び出されて、ぼくのそだて方について、おこられていたのをぼくは知っていた。ぼくの前では、

「大じょうぶよ、わざとじゃなかったし、ちゃんとあやまったんだから、これから気をつければいいんだよ」

と、優しく話してくれていたけれど、夜中にないているおかあさんを見て、ぼくは大へんなことをしてしまったと、こわくなってしまった。しっぱいしたのはぼくなのに、おかあさんがどなられているのを見て、とてもかなしかった。おかあさんが何日もペこぺこあやまりつづけているのを見て、ぼくはようち園に行く前になると吐くようになってしまった。夜中はこわい夢でねられなくなってしまった。

そして、ぼくは心の病院に通うようになった。先生は何でも話していいよって、時計を一回も見ないで、長い間ぼくの話を聞いてくれた。ぼくは、けがをさせたのはわるかったと思っていたけれど、それとはべつに本当は、ぼくのおかあさんをしかりつづけた人たちをきらいになっていた。そのことを、ぼくは泣きながらぶちまけた。先生は、

「いい人だけが、のぶくんをそだててくれるわけじゃないんだよ。本当は辛いことや、いやだなあって思う人が、のぶくんをそだててくれていることがあるんだ。ひどくおこられた時に、『のぶくん、わざとじゃなかったよ』って、先生に言ってくれたお友だちがいたでしょ。しらんぷりだってできたのに、たすけてくれたその子が、のぶくんの宝ものだって気づいたでしょ。ママがどなられたすがたを見て、ママのために、気をつけようって思ったでしょ。だから、もうおっちょこちょいしないのぶくんに生まれかわったんだよ。今日からいいことしかないよ。きのうまでは一番さいあく〜。だから、あとはあがっていくだけだよ」

って、言ってくれた。本当だったの、あれから、いいことしかなかった。あのことがあった日が一番さいあくな日。あとはあがるだけだった。それに、ぼくは宝ものに気がついた。ぼくをかばってくれた友だち、おかあさんをかばってくれたおかあさんの友だち。

あのしっぱいが、ぼくを「おっちょこちょいくん」から、変えてくれたんだ。先生に会えて、本当によかったと思う。また会いたいなって、心から思う。


(敬称略・学年などは2016年2月6日時点)

  • (注)入賞作品を無断で使用したり、転用したり、個人、家庭での読書以外の目的で複写することは法律で禁じられています。


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  • 主催
  • 日本医師会
  • 読売新聞社
  • 後援
  •  厚生労働省
  • 協賛
  • 東京海上日動 東京海上日動あんしん生命

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