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第34回 「心に残る医療」体験記コンクール 〜あなたの医療体験・介護体験を募集します〜

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第34回入賞作品

<一般の部> 入選

心の支え、ベイリー

梅原 美恵(うめはら みえ)(47)神奈川県

ホスピタル・ファシリティドッグのベイリーとの出会いは3年ほど前。娘が検査のために、こども病院に日帰り入院をした時のことでした。

眠りから覚めてベッドでぼうっとしている娘の病室の横を、白いふさふさしたものが通ったのです。ゴールデンレトリバーでした。衛生面で厳しい病院に犬がいたので一瞬驚きましたが、私は慌てて犬を連れているハンドラーのMさんを呼びとめたのでした。「娘は、動物が大好きなのです」と言うと、Mさんは快く犬を連れてベッドの脇まで来て下さいました。娘は、大きな犬を見てびっくり。もっとそばで見たかったのですが、点滴もしていましたので、起き上がることができません。そんな状況を察してか、Mさんは餌をとりだし、娘の前で2、3回食べさせました。美味しそうに食べている様子を見て娘も嬉しそうにしていました。そして名刺を頂きました。名刺には「ベイリー」と名前が書いてありました。

 家に帰ってホームページを見てみると、ベイリーが生まれながらにして選ばれた犬で、その性格も穏やかでフレンドリーであること、ハワイで特別な訓練を受けてきたこと、犬から人への感染症には問題なく衛生面でも配慮されていること、以前看護師だったMさんとの出会いやファシリティドッグの役割、そして日本にはまだ2頭しかいないことを知りました。

 今年、娘は6年生になりました。大なり小なり、幾つめの手術になるのでしょうか。娘の人生の上でも節目となるような大きな手術がありました。

それは、頚椎の手術です。生まれながら後頭骨の一部が出ていて、脊髄を通る神経を圧迫しているため、何かの衝撃で麻痺が出たり、最悪の場合呼吸が停止する恐れがあるとのことで、手術を勧められたのでした。その内容は、出っ張った骨を切り取り、更に金具と腰骨の移植で首と後頭骨を補強するというものでした。また、首と頭を固定するために3か月の入院となります。

計画入院とは言え、知的障害のある娘にどのように説明したらいいか。騙し騙しの入院、手術でした。

8時間の手術を終え戻ってきた娘は、髪を剃られ、頭をボルトで固定された痛々しい姿でした。自分の姿を見たらどう思うのだろう。重い、自由の利かない装具を着けられ、家族と離れての生活。きっと拷問にでもあわされている気持ちではないか。何度も罪悪感に襲われました。「家に帰る!」「これ、とって!」。そう言ってしばらく涙を流していました。

ICUから一般病棟に戻ってきた翌日、大好きなプレイルームに保育士さんが誘って下さいましたが、行きたがらなかったようです。とてもそんな気分ではなかったのでしょう。ところが、その日の午後にベイリーの訪問がありました。娘は、ベイリーが来たことを知ると「行く」と言って車椅子でベイリーのいるプレイルームに行きました。重い装具にまだ慣れず、体を傾け、車椅子から落ちそうになりながらも、ベイリーの様子を満足そうに見ていました。その日以来、何度ベイリーと遊んだことでしょう。週2回の訪問が楽しみで楽しみで、いつも周りの人に「ベイリーは?」と聞いていました。ベイリーがやってくると、床にベイリーが寝転ぶためのシートを広げ、餌をあげたり水をあげたり、口を拭き、毛並みを揃え、まるでハンドラーのMさんになったかのようにお世話をするのでした。しっぽや髭をいじられても、ベイリーはびくともしません。堂々とゴロンとなり心地よさそうにいつもしていました。

そんなある日、医師から外泊許可が出ました。2か月ぶりに家に帰ることが出来るのです。しかし、手放しで喜ぶことができませんでした。一度家に帰ったら、もう二度と病院には行かないと言うのではないか。家族皆そう思いました。実際、外泊して病院に戻ってきた時に泣いているお友達もいました。娘に、一時帰宅が理解できるのだろうか。家族の心配もよそに、帰宅した当の本人は、月曜日にベイリーが来るから病院に戻ると言って、さっさと戻る準備を始め、家族を驚かせたのでした。

沢山心配事もありましたが、ベイリーがいるから大丈夫と家族も思えるようになりました。ベイリーは、娘の心の支えであり、いつしか家族にとっても支えとなりました。ベイリーあっての入院生活、ベイリーに感謝です。

心身ともに成長段階にある子供の入院に、「心のケア」の必要性を実感すると同時に、このようなホスピタル・ファシリティドッグの取り組みが、全国のこども病院に広がっていくことを心から願っています。

退院から数か月過ぎた今も、ベイリーの写真を見ては嬉しそうにしている娘です。


(敬称略・学年などは2016年2月6日時点)

  • (注)入賞作品を無断で使用したり、転用したり、個人、家庭での読書以外の目的で複写することは法律で禁じられています。


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  • 主催
  • 日本医師会
  • 読売新聞社
  • 後援
  •  厚生労働省
  • 協賛
  • 東京海上日動 東京海上日動あんしん生命

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