読売新聞へようこそ■イベント

第34回 「心に残る医療」体験記コンクール 〜あなたの医療体験・介護体験を募集します〜

トップページ > 第34回の受賞作品一覧

第34回入賞作品

<一般の部> 日本医師会賞

娘を支えてくれた人たち

福島 正義(ふくしま まさよし)(39)静岡県

6年9か月という短い人生を終えた愛娘。実に人生の半分以上をお世話になった、こども病院の職員の皆様とは、娘との思い出をたくさん残して頂きました。

看護師のFさんが娘の担当になり、どんな人かなぁと娘もドキドキしていましたが、すぐに優しい雰囲気のFさんが大好きになりました。AKB48のDVDを見ながら一緒に振り付けを覚えたり、ディズニーの話をして盛り上がったり。いつも笑いの絶えない病室だったと思います。骨髄移植を受けるにあたっては、当時3歳だった娘でもわかるように、イラスト付きで分かりやすい冊子を作ってくれて、ゆっくりと時間をかけて説明してくれました。どんなに小さな子でもきちんと分かりやすく説明をして、その子に治療を受け入れてもらうという姿勢は共感できました。

面会時間は限られているので、私たちが行けない間、看護師さんをはじめ、保育士さんや心理士さん、メディエーターさんといった方々が娘に関わって下さり、ママやパパと離れていても寂しくないようサポートして下さったのは本当に心強かったです。

5歳の時白血病に罹り、2度目の骨髄移植をしなければならなくなりました。楽しみに通っていた幼稚園も休園することになった娘でしたが、「頑張る。病気をやっつける」と言ってくれました。それは今までの病院での生活の中で、職員さんたちと信頼関係が築かれ、みんなとだったら頑張れると信じたからなのだと思います。

移植を乗り越えて頑張る娘でしたが、なかなか良くならない状態が続きました。頑張って幼稚園にまた行くんだという夢も叶わなくなりました。卒園式にも出られない。ところが幼稚園の先生方とFさんが協力して、病棟で娘のためだけに卒園式を開いてくれることになりました。はじめはそんなことできるのかなぁと思っていましたが、Fさんがすごい情熱を持ってやってくださいました。Fさん中心に病棟の皆さんで手作りの飾りを造り、お部屋を華やかにしてくれました。たった一人のためだけにそんなことをやってくれることに感動しました。Fさんの尽力もあり、無事卒園式を執り行うことができました。ベビーカーに座って参加した娘。驚いたことに、その時は筋力がだいぶ弱って立つのもままならなかったのですが、先生から証書と贈り物を頂く時は、しっかりと自分の足で立って受け取ることができました。参加したみんなが涙を浮かべながらも笑顔で、本当にほほえましい時間でした。

Fさんのことは娘も大好きだったので、わがままや無理も言っていたと思います。でも苦手な看護師さんだと遠慮して言えなくなるので、そうやって娘なりにバランスを取っていたのだと思います。Fさんは娘にとって、心の支えになっていたのだと思います。

いよいよ状態が厳しくなり、娘の病室にはベッドを2つ並べ、私と妻と娘の3人で川の字になって寝られるよう配慮してくれました。3人で寝られるのはいつ以来だろうな。昼には弟も遊びに来てくれて、久々の再会を楽しむことができました。たくさんの病院職員さんが娘に会いに来てくれました。娘とこんなことあったよねぇとみんな思い出して笑っています。きっと娘も聞いていたと思います。とてもありがたかった。そして帰る時みんなが言っていました。「じゃあね、今日は帰るけど、また明日会おうね」と。どんなに辛い状況にあっても、そうやって娘が元気になることを信じるという気持ちは私たちの心に響きました。そして嬉しいのか悲しいのかよく分からない涙をたくさん流しました。

娘の最期の夜はやっぱりFさんと、もう一人、娘が大好きだった看護師さんが夜勤でした。きっとその時を見計らって逝ったのだろうねと話していました。夜勤中で忙しいにも関わらず、息を引き取ってから、娘の体を私達と一緒にお風呂で綺麗に洗ってくれたFさん。「Fさんがいてくれて、娘も喜んでいると思います」と言うと、「いえ、私は何もできなくて…」と涙をポロポロ流されていました。その後、小学校の入学式に着ていく予定だった洋服を着せてくれ、お化粧もしてくれました。その時には娘の周りにはたくさんの病院職員さんたちが集まってきていました。みんな娘との思い出話をしています。「小学校に行けたね、良かったね」と声をかけてくれました。

娘が病気にならなければ出逢わなかったご縁。だけど娘にとっては、本当にかけがえのない時間を過ごさせてくれた人たち。元気にさせてあげられなくてごめんねと涙を流された方もいました。本当は元気になって欲しかったけど、こんなにも素敵な人たちに囲まれて、娘は幸せだったと思います。出逢ってくれたことに、感謝いたします。ありがとう。


(敬称略・学年などは2016年2月6日時点)

  • (注)入賞作品を無断で使用したり、転用したり、個人、家庭での読書以外の目的で複写することは法律で禁じられています。


[第34回受賞作品一覧へ]

  • 主催
  • 日本医師会
  • 読売新聞社
  • 後援
  •  厚生労働省
  • 協賛
  • 東京海上日動 東京海上日動あんしん生命

ヨミドクター