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第33回 「心に残る医療」体験記コンクール 〜あなたの医療体験・介護体験を募集します〜

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第33回入賞作品

<中高生の部> 優秀賞

富元家のマスコット

富元 怜司(とみもと れいじ)(13)鹿児島県

4年生のとき、僕のおばあちゃんはくも膜下出血で倒れた。すぐに手術が行われ、手術時間は12時間に及んだ。しかし、僕のおばあちゃんは奇跡の回復を見せ、自分で歩けるようになり大事にはいたらなかった。

そんな元気ピンピンのおばあちゃんが、まさかこんなことになるなんて。

中学1年生のとき、おばあちゃんが癌にかかったことを知った。そのときの僕は、大好きなおばあちゃんの癌が信じられなくて泣いた。ショックだった。まさか癌だなんて。なぜ、他の病気じゃなかったのだろうか。

でも、くも膜下出血で倒れた時だって、おばあちゃんは見事に回復したのだから「絶対、大丈夫だ」と心のどこかで思っていた。元気に笑っているよと想像していた。

病院に着いて、おばあちゃんの姿を見ると目を疑った。僕の知っているおばあちゃんじゃなく、目の前にいるのは全く別人のように見える。とてもむくんで顔色は悪かった。おばあちゃんは笑顔で声をかけてくれたけど、僕は返す言葉が見つからなかった。驚きのあまり、その日はほとんど話さなかった。

帰り道、母に聞くとすい臓に腫瘍が出来、すい管や総胆管を圧迫し、肝臓の毒素が体中にまわっているのだと教えられた。おばあちゃんは孫が心配していることに気付いたらしく自分は大変な病気かも知れないと思ったらしい。僕はしまったな、という気持ちと共に、おばあちゃんはすごいな、とも思った。僕の様子で病気を感じるなんて。

体中に毒素がまわるといけないので、総胆管のつまりを治すことになった。奄美大島ではこの処置ができない、すぐに鹿児島の大学病院へ向かった。1週間絶食だったおばあちゃんは歩くことも精一杯だ。みんな仕事の都合をやりくりし、交代で飛行機に乗り鹿児島を往復した。元気に戻ってくることを、僕は毎日、祈っていた。

おばあちゃんが鹿児島にいる間、僕はとても不安な気持ちになった。一体これからどうなるのだろうと、しきりに悩んだ。もし何かあったらととても落ち着くことができなかった。数日後、

「おばあちゃんがご飯を食べれるようになったってよ」

と、うれしい報告を受けた。僕は

「えっ!! 本当、食べれるの?」

と、心底驚いて聞いた。母は、

「よしっ!! これで退院できる」

とガッツポーズ。

帰ってきたおばあちゃんは、顔色が良く、とてもニコニコしていた。おばあちゃんの

「ご飯がおいしい」

の一言で、とてもいやされた。病室いっぱい笑顔がひろがり、何だかとても温かかった。

翌日、僕の家で告知について家族会議が行われた。富元家で一番下の僕にも意見が問われた。僕はしっかりと答えを出すことができなかった。告知によるおばあちゃんの気持ちの落ち込みを家族は心配していたが、真実を伝えないことは、だましているような気がして、告知を決意した。告知後、気落ちしないように、どうしたら良いのか、大人たちは何度も話し合ったようだった。

母から聞くと、おばあちゃんはいつもと同じように普通の態度で告知を聞いていたようだ。母がおばあちゃんに聞く、「癌についてどう思ったのか」と。おばあちゃんは答える。「子供たちがどう思っているのかなと思って」。これでは、私たちが面倒を見ているのか、それとも見られているのか分からないと母は笑う。僕は言った。

「おばあちゃんは富元家のマスコットだね。皆がおばあちゃんのことを、おばあちゃんが皆のことを考えているんだ」

富元家は、くも膜下出血、認知症、癌など病気と直面した。でもその度に、富元家の絆は強く太くつながる。

おばあちゃんは、皆に笑顔でふるまっている。僕自身もすごくはげまされる。おばあちゃんは富元家のマスコットなのだから。

おばあちゃんは、様々な病気になる。入院も退院もひっきりなしで、僕は一人でご飯を食べる日が増える。でも、母は笑う。富元家全員分の病気をおばあちゃん一人で引き受けているんだから、健康な私たちが協力するんだよ、と。

僕とおばあちゃんの間に残された時間は余命半年。おばあちゃんとどんな思い出を作ろうか。おばあちゃんと笑って過ごせるように、富元家で楽しく笑い合えるように、わずかな時間を大切に。

いつか、その時が来る瞬間まで、いっぱいの笑顔と温かな時を共に。


(敬称略・学年などは2015年3月7日時点)

  • (注)入賞作品を無断で使用したり、転用したり、個人、家庭での読書以外の目的で複写することは法律で禁じられています。


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  • 主催
  • 日本医師会
  • 読売新聞社
  • 後援
  •  厚生労働省
  • 協賛
  • 東京海上日動 東京海上日動あんしん生命

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