篆書の世界
篆書(てんしょ)は中国で最初に生まれた書体で、甲骨文字(こうこつもじ)から殷(いん)・周の金文(きんぶん)、秦(しん)の小篆(しょうてん)までの千年に及ぶ歴史をもつ。一般的には、印鑑の文字でなじみがあるもの。
西川寧と篆書の出会いは、実に早い。満5歳にして、「壽」の文字を焼物に書き、6歳にして「仁者寿」の白文方印を刻している。
西川は、馬王堆漢墓(まおうたいかんぼ)から絹に文字を墨書した「帛書(はくしょ)」が出土すると、これを臨書するなど、新しい出土品にも心を配り、自らがめざす書の本質を極めるべく、労を惜しまなかった。西川以前の日本の篆書は、形はあるが筆意を持っていなかったようである。清時代の碑学派とよばれる人々が殷・周の金文や漢の碑などに範を求めて筆法の解明をめざしたように、文字の構築美だけでなく、筆意をも表現したのである。 |

ばんぱく
東京国立博物館蔵
1978年の朝日20人展への出品作。前年の冬の制作。西川寧ならではの篆書作品。しっかりとした文字の構造性を持ち、筆力の強さから激しい気迫が伝わる。さらに、滲みとかすれ、筆のタッチには、強さに加えて細やかな神経も感じられる。 |
|