楷書の世界
楷書は、点画を略したり続けたりせずに書く書体。西川寧の楷書の基盤には、北魏の龍門造像記や山東省にある「張猛龍碑(ちょうもうりょうひ)」、それに若いときから傾倒した清代の能書趙之謙(ちょうしけん)(1829−1884)があることは、その作品をみれば如実にうかがえるだろう。
さらに、「僕の楷書の筆はどんな所から出たのかしらと自分で分析して見たことがある。そして、わかって見るとそれは隷書(れいしょ)の骨法(こっぽう)だった」(『書道講座1』)というように、隷書の筆法が、その根幹をなしていたことを西川自ら吐露している。
西川の青年期、書壇では行書・草書・仮名作品が創作の中心だったが、彼は中国書の構造性に着目し、意欲的な楷書作品を相次いで発表した。当時、驚きをもって迎えられたことが想像されるが、現在もその書は生き生きとした輝きを伝えている。 |


きょうていあんし
東京国立博物館蔵
北碑(ほくひ)と趙之謙への傾倒をうかがわせる豪快な楷書である。落款(らっかん)まで本文と同じ大きさで加えて仕上げる。筆の弾力を駆使した雄渾な書である。行のうねり、文字の大小、巧みな文字配置で、西川の美意識を表現する。 |
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